静岡県では何回か遭遇したが、県外では見かけたことが無い食べ物のひとつ、トマトのおでん。かなり創作色の強い店とか、あるいは古くからある店の名物メニューという印象。あまり家で作るイメージが無いが、今日は作ってみた。
理由は簡単、外で買ったおでんがあったので。それにトマトが冷蔵庫にあった。
おでん、自分で作るのも簡単だが、スーパーマーケットでもコンビニでも、出来合いのものが売られている。少量ならばそちらのほうが安い。たまに妙に買いたくなる。食べたいというより買いたい気分。
たいてい、野菜が足りないが、足せばいい。
今日の特売品は、妙に具材が少なかった。おでん袋詰め工程で何かしらのトラブルがあり、出荷合否すれすれの品質で1ロット製造した、という雰囲気がある。だからこその安値、納得の価格。ストーリーの感じられる品ともいえる。
でもちょっと寂しい。
メークインを細く切って、電子レンジで火を通してから追加。餅は油揚げに入れて。焼津名産の黒はんぺんも使う。
そして、トマトを丸ごと1個、これは中心が温まれば良い。皮に薄く十字の切れ目を入れておいて、ある程度火が通った時点で(湯むき状態)丁寧に剥く。再び鍋に戻し、沸騰しないようゆっくり温めれば完成。崩れると汁にトマトの酸味が移るため、心配ならば別にとった小鍋で加熱すればいい。
これは好みだが、やはり他の品とは別の器に盛りたい。様々な味が渾然一体となりトマトが全体を…という料理ではないので。
黒胡椒をがりがりと挽いて完成。
味はまあ、普通に美味しい。特別な冬のファンタジーが生じる訳でもなく、かといって口に詰め込んで胃に送り込むような味でもない。
しいて言えば、薄いコンソメスープで同じように料理して、バジルでも散らしたほうが美味しいとは思うが、それはまた別の日の料理。今日はおでんを食べたかったのだ。
おでんにトマトが入るだけで、「90年代後半の、ややサブカル趣味なレディコミ」っぽさが醸し出される。そう感じているのは僕だけでないと信じたい。「やまだないと」とか「魚喃キリコ」とか、あんな感じ。あの時代、中央線沿線に住むお洒落かつ低血圧気味な同棲カップルは、みんなベランダで煙草を吸っていた。少なくとも漫画ではそう描かれている。実際はよくわからない。
とにかく、わざわざ少しアンバランスな事をするのは、僕は「あの時代の空気」だと思っている。自分の宿痾でもある。
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