野良犬とトンネルと水に濡れた蝶々と

雨の月曜日。

通勤の際、山の中を走るバイパスを使う。当然、トンネルが多い。
早朝にもかかわらず、今日は唐突な渋滞が発生していた。

渋滞の原因は、野良犬だった。
トンネル(700mくらい)のほぼ最奥部で、汚れきった犬がうろうろしていたのだ。慎重に交互通行して事なきを得たが、最近はあまり野良犬自体を見ないため、なんだか印象に残ってしまった。暗い印象。
その犬が、パピヨンだったから、なおさら。

 

学生時代に、シベリアンハスキーの野良犬に遭遇した。
学校をさぼって、山奥の道をスクーターで走っていたときに、大きな犬が併走してきたのだ。ちょっと尋常ではない雰囲気で、捕捉されたら噛み殺されそうだった。舗装道路を走っている限りは大丈夫だとしても、転んだらきっと命に関わる。生き物に関わって生命の危機を感じたのは、後にも先にもあのときだけだった。

しかし大型犬というのは、本当に速く走れるものだ。しかも吠えながら。
あれはきっと、捨て犬だったと思う。シベリアンハスキーのブームが一段落した時期で、場所は都会から少し離れた田舎、高速道路ならすぐの「手軽に捨てられる土地」だった。思えばあの犬も汚れていた。

 

そして、社会人になって数年した頃に、富士五湖でキャンプをしていて、今度はラブラドール・レトリバーの野犬に遭遇した。湖に突きだした岬の向こうに2匹、こちらに来ることは無さそうだったけれど、周囲のキャンパーには伝えて、いちおう警戒はしておいた。管理事務所の人は警察を呼んでいた。
長毛種の野犬というのは、本当にみすぼらしく、哀れに見える。元気も無くて、夕暮れ時のその姿は、「死」を思わせた。

 

そして今回のパピヨンである。
きっと捨て犬だろう。迷い犬は、山奥の高架を渡ってトンネルに来るだろうか。
小型犬が、山でどれくらい生きられるのかはわからない。冷たい雨で毛が細く張り付ていて、まるで犬じゃないように見えた。

 

 

人生における、数少ない野良犬との遭遇。
それぞれ、ペット業界の流行り廃りに連動しているようで、なんとも心が寒くなる。
いや、それこそ幼稚園児の頃には、近所のニュータウンでは「野良犬狩り」があったと聞いている。保健センターと町の有志が共同で、里山に潜んだ野犬を定期的に駆除していた。
いくらなんでも飼い犬からの潤沢な供給があるわけではないだろうから(そんなに頻繁に脱走して野生化する犬がいるとも思えない)、あの組織立った「野良犬狩り」も、つまりは「捨て犬狩り」だったのではないか。

なんともやりきれない話だ。
人の価値観は様々とはいえ、家族として迎え入れた、感情のありそうな大型の生き物を、飼えなくなったからといって野に放つというのは、簡単には共感できない感性だ。しかも今回のパピヨンは愛玩犬だ。「きっとお前なら、山でも暮らしていける」なんて考える人はいない。
まだ、「無理でした。処分願います」といって、保健所に連れていくほうがフェアだと思う。もちろんそんな事は間違っているけれど、でも一時の感情で家族を増やした人間の、最低限の社会性として、家族を減らす際のやりとりはきちんとしてほしい。山に捨てるなんて、産業廃棄物扱いで、しかも違法投棄だ。

 

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【映画ノベライズ】先生と迷い猫 (宝島社文庫)

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そんな憤りとは別に、今日は微熱があります。
医者に行ったら、ただの風邪だろうとのこと。仕事を切り上げて帰宅。今日は早々に寝ます。実際、とても眠い。

 

 

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全然関係無いけれど、静岡県中部ではメジャーな焼きたてパンの店、「ピーターパン」では、「チョコボーイ」というパンが人気です。餡は入っていないし、店がチョコボーイというのだから、これはチョコボーイなのです。愛と勇気だけが友達かもしれません。

 

 

 

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