昼から静岡のミニシアターで、『完全なるチェックメイト』を鑑賞。
チェスを扱った作品は、小説でもノンフィクションでも大好き。特に昨年読んだ『盤上の夜』は、読んでいて世界の色が変わったような不思議な体験だった。
もちろん小川洋子の『猫を抱いて象と泳ぐ』も好き。楽しい話ではないのに、たまに引っ張り出して読む。
さて、映画の『完全なるチェックメイト』は、あのお騒がせ世界チャンピオンであるボビー・フィッシャー氏を描いた「事実を元にした作品」だ。
強いが変人、陰謀論にとりつかれた神経衰弱チェスプレーヤーとして有名な人。晩年には日本にも滞在した。
天才と変人は紙一重である必要も、天才は必ず変人である必要も無い。
彼の場合は、時代と環境と、もちろん本人の資質が、その偏屈さを修正させなかった。あるいは冷戦や出自が、その病を深める。それが強さの代償なのか、逆に「まともな人」になれたらさらに強くなったのかは、映画だけではわからない。
彼は幸せだったのだろうか。
「しんどかっただろうな」とは思う。
望んでいた勝利を手にした時ですら、目はガラスのように冷たく開かれていた。にこりともしない。印象的なシーンだ。
これがつまり、修羅の世界というやつなのかなあ、と映画館を出たあとに(ジェミニーズでフレンチトーストを食べながら)考えたりもした。
単純に、天才の悲哀、紙一重の人の変わった人生、とは片付けにくいもやもやが残る。
変な話だが、ボビー氏が存命だったならば、村上春樹氏にインタビューしてもらいたかった。何か面白い本になったのではないか。
主人公はエキセントリックかつ騒がしい。
時代背景だってばたばたしている。
演出も音楽も、派手だがちょっとダサい。
そんな作品だったが、静謐さを感じ続けていた。それはチェスというマインドスポーツのせいかもしれない。
完全なるチェス 天才ボビー・フィッシャーの生涯 (文春文庫)
- 作者: フランクブレイディー,Frank Brady,佐藤耕士
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2015/08/04
- メディア: 文庫
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ちなみにフレンチトーストはこんな感じ。
美味しかった。