最近、夜はカフェインレスコーヒーを飲んでいる。
無印良品で安売りされていた、スティック包装のインスタント。牛乳(無脂肪乳)に投入し、電子レンジで加熱して、飲む。手軽。味はまあ、こんな飲み方だから、よくわからない。コーヒー味の温かい牛乳としては、上等だと思う。
しかし個包装のインスタントコーヒーは、手軽さでは最上だが、コストはかかる。ゴミだって出るし、嵩張る。だからこれは、たまに補充して、とっておきの品として(例えば残業で疲れてスプーンで計るのも面倒な時などに)切り札的に保管しておきたい。
もう少し時間的精神的な余裕のある時には、瓶入りのカフェインレスインスタントコーヒーがあればいいなあ、と考え、先ほどスーパーマーケットに行ってきた。
そして、うっかり、カフェインレスのインスタントコーヒーではなく、チコリコーヒーを買ってしまった。ネスカフェやAGFの品と価格が同じくらいで、ならばどうせなら珍しいほうがいいや、と衝動買いをしたのだ。僕の衝動買いは、どちらかというとこの種の日常感が強い傾向にある。
どうやらオーガニック食品の会社が輸入している品らしい。
ドイツ製。
原材料は、有機麦芽に有機大麦、有機チコリに有機ライ麦、有機イチジクである。僕ならばカッコでくくってアタマに有機とつけて済ませるだろう。
とにかく有機なのである。ラベルの接着剤もオーガニックソルベント入りなのかもしれない(特に気にしない)。
ラベルを読むと(ドイツ語が主なのでよくわからないが)とにかくビオびおビオびおしている。いろんな認証マークがついた、立派なものだ。
味はコーヒーとは違う。
例によって無脂肪乳に溶かしたものだから、味なんてそれほど気にならないけれど、どこか煎じたような、植物風味がする。良薬口に苦しというか、ナチュラルなカフェの食べ物に似た、ぼんやりした味わいがあって、それが有り難みに思えてくる。“ご馳走”っぽさには欠ける。
こういう品でも納得できてしまうあたりが、ドイツの、あるいはヨーロッパの底力ではないか。よくわからないが、飲みながらそんな事を考えた。
考えてみると、コーヒーは実に偉大だ。
木の実の種を炒ったのに、全然青臭くない。コーヒーはコーヒー風味だけ。それに比べたら、チコリコーヒーは「草っぽい」のだ。
でも代用品は好き。
これが、あの第二次世界大戦の時にも飲まれていたというのだから、代用品好きとしては心して味わうしかない。当時はコーヒー自体が高級嗜好品だったので、チコリコーヒー自体は独立した飲み物として愛飲されていたと本で読んだが、つまり現代日本のラーメンとカップラーメンみたいな関係だったのかもしれない。そう考えつつ、粉末をぺろりと舐めてみると、改良と工夫が感じられる、そんな気さえしてくる。
結果として、新しい味が日常に加わったという点で、カフェインレスのインスタントコーヒーを購入するよりも良かったのだと結論づけたい。
以前どこかで飲んだものは、もっとチコリっぽかった。飲んだ瞬間に、「あ、僕はやっぱり普通のコーヒーがいいです」と思った。
それに比べたら、抜群に飲みやすい。
コーヒー1杯のカフェインがもたらす覚醒作用は約15分、と医者が言っていた。だとしたら、夜に飲むものがカフェインレスだろうが何だろうが大した差は無いはず。とはいえ、寝付けない夜には、つい数時間前に飲んだコーヒーの事を考えてしまう。ならば精神の平和のためにも、やはり夜はカフェインレスコーヒー(あるいは代用コーヒー)が良い。ハーブティーも美味しいが、たまには気分を変えたい。