最近よく「子供がパソコンやスマートフォンに夢中で困っている」という話を聞く。
真夜中までインターネット上でのやりとりをして、睡眠不足になり、人間関係のトラブルを抱え、悪質な情報を得て、非行に走る、なんて話は職場の人達もよく話している。
だからインターネットは危ない、駄目だ、と話は結論づけられる。
この件、僕は「そんなもの、設定でなんとでも回避できるじゃないか」と思う。
思うが、基本的に口にしない。感心されるよりも、嫌なやつだと思われる可能性が高い分野と知識と話題なのだ。ことコンピュータとネットワークに関しては「それは簡単です」とは言わないほうが、日常を穏やかに過ごせる。困った時に活躍すると褒められるが、語ってはならない。Windowsのショートカットキーを教えただけで反感を持つ人だって、世の中にはいるのだから。
昔のパソコンでは、あるいはゲーム機では、こういうコントロールは本当に難しかった。
僕が子供の頃、ゲームに夢中になり過ぎたために、親が怒ってACアダプタを隠した事があった。しかしAVアダプタくらいなら、家を探せば簡単に見つかる。他の機械から流用しても、きちんと動く。ゲーム機本体はかさばるし、さすがに隠しづらい(購入時の箱を収納に使っていたから、なおのこと隠しづらい)。離れや倉庫といった場所まで隠し場所を拡大しても、遊びたい子供(僕と兄)が本気で探せば、あっという間に発見された。
あの懐かしい長電話の時代もまた、コントロールが難しかった(と想像する)。
家の固定回線を制限することは、基本的にできなかったのではないか。
いくら親が頑張っても、それをすり抜ける余地が多かった、そういう時代だったのだ。
今のパソコンやゲーム機ならば、使用時間や時刻、それにインターネットへの接続などを、細かく設定できる。アカウント毎の制御だって可能だし、一律に制限を課すことも容易だ。親だけに通じるパスワードを決め、あとはチェックボックスを埋めていくだけ。それを手助けするアプリケーションやサービスだって数多い。ざっくりとルーターで設定しただけでも、多くの問題は封じ込められる。
ゲーム機などは所持せず、コンピュータ・ネットワーク関連の知識など皆無の僕でさえ(子供はいない)、それくらいはわかる。知らなくても「できる」ことくらいは予想できる。
まあ、そうなったとしたら、子供側としては全力をあげてパスワードの解読を試みるだろう。
推測不可能な、つまり強靭なパスワードを設定し、管理すればいい。パスワードの写しは財布の奥にでも隠して、もし子供がそれを盗み見ようとするのならば、それこそ親の財布から金を盗んだくらいの勢いで叱る。それくらいの意気込みのほうが、将来に向けての教育になると考える。
要はこれ、ポリシーの問題なのだ。
どれだけ真剣に向き合っているかが問われている。
子供がクラッカーになってしまう心配よりも、「管理者としての自分」を気にしたほうが建設的だろう。
別の言い方をするならば、「そんなの無理」と言う前に出来ることはたくさんある、という事だ。
昔なら無理だったことも、今ならばできる。任天堂やマイクロソフトやLINE社も、機能は実装しているし、情報だって公開している。真っ黒い画面にコマンドを打ち込む必要は無いのだ。
自然災害や変質者とは違う、そういう意味では「大人の側の問題」だろう。
この問題について、特に「ネットワークに接している時間が長すぎる」件には、特効薬がある。通信料を従量制にして、加えて料金を高額にすればいい。あらゆる通信に、この手は使える。
要は、多くの「困った」と言っている人が、それほど身にしみて困っていないのだ。金銭の問題に切り替われば、7割くらいの「設定なんて難しくてわからない」と言っている人達が、本気で考えるのではないだろうか。教育に興味が無くても、日々の出費に興味がある大人は、少なくない。
そうした対策をきちんと行い、そのうえでようやく始まる「親子の対話」もあるのだと僕は考えているのだが、実際のところどうなのだろう。
親子だけでなく、子供社会や親同士でも考える事は多くなる。面倒かもしれないが、「最低限の秩序ならば自分で構築できる」、そんな風に考えようとしないのは、知的怠慢と言われても仕方がないと思う。
なんで急にこんな話を長々と書いたのか。それは、先ほど帰宅前に知人宅のタブレットとゲーム機(ニンテンドー3DS)の設定を済ませてきたからだ。
その際に「アカウントの切り替え?面倒だ」と言われたのだ。「面倒ならば、セキュリティやペアレンタル・コントロールなんて無視しちゃえばいいのに。というか僕に頼まなければいいのに」と思ったけれどもちろん言わない。夕食(カキフライ)の分だけの義理もある。
「馬鹿につける首輪は、それなりに頑丈にしなければ駄目でしょう」なんて言うと角が立つから(まるで知人の子供が馬鹿だと言っているみたいじゃないか)、別の言い方をする。「大丈夫、すぐ慣れます。それに子供がインターネット越しに持ってくるトラブルに比べれば、楽なものです」と。そして「結婚記念日はパスワードに使わないで下さないね。小学3年生なら、簡単に推測します」と言い添える。「3ヶ月ごとに変更」までは、さすがに求めない。
世の中には、興味が無いことに対して無頓着な人が多すぎる。
誰であれ全方向的に満遍なく興味を持つことなんて不可能。しかしそれでも「これは問題だ」と思って、そして他人に対策を頼んだ物事に関しては「全く知らないけれど、興味が無いから適当に済ませたいです」とは言ってはいけない。それは礼儀であり、また正義の話として、そう思う。この辺り、自戒を込めて向き合っていきたい。
全然関係ないが、「有頂天家族2」が、ようやく発売された。
買ったが、まだ1ページも開いていない。
「静岡百景」の文庫版も発見。これも購入。文庫版も愛らしい。おすすめの本です。