ティラピア - t

　今日も疲れた。というか、眠かった。
　昨晩は寝付くのが遅くて、しかも今朝は薄暗いうちにから目が覚めてしまった。
　朝はもう、めちゃくちゃに辛かった。そしてなにしろ仕事2日目なので、参考資料やマニュアルを読むだけが勤務時間に課せられた仕事で、緊張しているから寝ることは無いにしろ、明らかに思考力が落ちて困ってしまった。それに眠気があると妙に疲れやすい。

　というわけで、今日は早く寝る。具体的には21時30分には寝てしまおうと思う。子供みたいだが仕方がない。ブラウザには未読のタブがたくさん残されているし、メールの返事だって途中。でもとにかく寝る。実のところ、夕食を食べ終えた今、とても眠たいのだ。

　職場は工場の中にある研究施設。ずいぶん広い敷地の、ほぼ真ん中に研究部門が集まっている。発電所から汚水処理場までひと通り揃っていて、昼休みに探検したら、たぶん時間内に戻ってこれないだろう。今日は体育館を発見した。

　建物と建物の間には縦横に水路が巡らせてある。見てみると、大きな魚がたくさん泳いでいる。暗緑色から青灰色で、形はスズメダイを巨大にしたような感じ。
　昨日からあちこちを案内してもらったが、みんな魚を見ると「ああ、鯉ですね」と教えてくれる。こんな鯉がいるわけなかろう、どう見たってティラピアじゃないか、と僕は思うのだけれど、しかし上司も先輩社員も「鯉です。水路は1年を通して温かいから成長が早い。万が一の汚染物漏洩を（炭鉱のカナリア的に）教える役割を持っている」と解説するのだ。
　なかなか不思議というか、不条理な感じがする。でもまだ「鯉じゃないよティラピアだよ」とは言えない。雑談をするほど打ち解けていないし、なにより試用期間なのだ。ずばり指摘したら「ああカトウくん、残念だよ。明日から来なくていいよ」と言われる恐れがある。それは困る。
　僕も数ヶ月したら「ああ、鯉が泳いでいるなあ」と言い出すかもしれないが。