中国の北部を旅してきた友人から、土産に蚕を貰った。
「電子レンジで加熱すると爆発する」と忠告された。味については「君なら大丈夫」とのこと。
電子レンジの中で昆虫の蛹が爆発するところは見たくないから、とりあえずそのまま食べる。
見た感じは、てらっと光った褐色で、腹の関節部分は縞模様になっている。日本の蚕(博物館、釣りの餌、あるいは図鑑で見た事がある)と同じ。油と塩とスパイスがまぶされている。
食感は、ぷちっ、むにっ、とろり。海老のような風味と、ごく僅かな苦味、そして口全体に広がる脂っぽいクセ。食べられない訳ではないが、沢山は要らない感じ。強い塩気と山椒のような味付けのせいもあって、酒のつまみを食べているようだった。珍味と言えるだろう。
後味に前述のクセが残るが、次々と食べているぶんには大丈夫。しかし水を含むと、その「虫っぽい後味」だけが強く口中に感じられて、手が止まってしまう。
おそらく、出来たての熱々をぱくぱく食べるものだろう。時間を置くと不味くなる類の食品だと推測する。酒と合わせたらどうなのかは、僕にはわからない。
ちょっとだけ炒めてみた。がりっと歯ごたえが生じ、そして中心部の柔らかさは増した。香辛料の風味もしっかりして、たぶん美味しくなったのだと思う。残念ながら熱くて食べづらく、冷めてしまうと元の味に戻ってしまう。
十数個食べた。ずいぶん残っている。ご飯のおかずには合わない感じだから、地道に消費していくつもり。両親は食べなかった。
そういえば、セミは美味しいと聞く。今の季節、庭には嫌になるくらい群がっていて、簡単に手で捕れる。想像だが、香ばしさと旨味は蚕より強いのではないだろうか。
今のところ食べる気は無いが、昆虫食を理解不能な下手物趣味とも思わない。友人は面白半分で買ってきてくれたようだが、僕としては面白い体験となったので感謝している。
そういえば伊藤計劃氏の著作が、表紙だけ変わって平積みになっていた。「虐殺器官」と「Harmony/」、それぞれ映像化されるらしい。
個人的には、こういう漫画・アニメ的な表紙よりも、以前の通常版のほうがクールで好きだ。しかし大好きな小説だから、これで多くの人達が手にとってくれたら嬉しい。