謎のマイ丼

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理由の説明できない衝動に従い、昼食は天丼を食べた。そういう日がある。

旧東海道から少し入ったところにある、小さな専門店。夜は天ぷらも出すようだが、昼間は天丼だけの店。
今日は「穴子入り」という豪華版にした。穴子と海老と烏賊と白身魚、それに夏野菜がいくつか。とても美味しい。

 

天丼をもぐもぐ食べていた際に、ちょっと変わったものを見た。近所に住んでいるような雰囲気の老夫婦が、丼鉢を持参していたのだ。
彼らは静かに「昼天2つ」とだけ注文し、それぞれが丼鉢を手渡す。しばらくすると、「昼天(ランチタイム用の天丼、野菜が多くてお得)」がその丼に入って運ばれてきた。
その頃に気がついたのだが、他のお客さん達も、この「マイ丼」制度を利用しているようだ。明らかに店のものとは違う丼を使っている人達がカウンターにもテーブルにもいた。食べ終えた丼は回収・洗浄され、さっと拭いたあとに会計の際に手渡される。

なぜこんな制度があるのだろう。今日の午後は、ずっと心に引っかかっているが、いまだにわからない。価格が安くなる訳でも無いだろうし、いったい何なのだろう。強いて言えば、「ご飯を自分の好きな量にしてもらえる」という利点が挙げられるけれど、何か理由として“弱い”気がする。
店の調度が陶磁器趣味的だったので、あるいは単に「常連客かつ同好の士が、それぞれ自慢の丼を持参している」だけ、という可能性もある。
しかしやっぱりわからない。こういう謎を、「日常の謎」というのだろうか。

 

ところで、先ほどドトールにて大惨事の現場に遭遇した。
コーヒーの入ったカップが手から滑り落ち、それを皿で受け止めようとした高校生がいたのだ。ちょっと考えればわかるが、カップをソーサーで受け止めると、両方とも割れる。そして想像以上の大きな音がする。さらに、落とした張本人は、それはそれは大変な金切り声を上げていた。
しかしまあ、騒がしいとはいえ、僕には関係無いこと。そう考えていたが、騒ぎに気を取られて、その際に思い浮かべていた、前述の「マイ丼の謎」についての(たったひとつの)冴えた推理をすっぱり忘れてしまったので、どうかコーヒーカップを落とした際には、もう少し穏便な方法と対応をして欲しいと切に願う。
もう一度コーヒーを飲めば、あの解答を思い出すだろうか。全ての疑問が解決する、矛盾の無い素晴らしい答えだったことだけは覚えている。

たったひとつの冴えたやりかた (ハヤカワ文庫SF)

 

 

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