駅の改札を出たところで、警察あるいは交通安全協会から、パンフレットとステッカーを渡された。
ステッカーは15cm✕8cmほどの大きさで「追突事故防止」と書かれている。色はミカンとお茶をイメージしたのか、オレンジ色と緑色。
これを車の後部に貼るように、と添え書きがある。
正直なところ、断じて貼りたくない。元々、ステッカーの類を車に貼る趣味が無いのだが、それは別としてオレンジ色のポップなフォントで追突事故防止を主張するなんて行為に意味を見出せない。
そもそも、シールを貼って、本当に追突事故が防止されると警察は思っているのだろうか。運転中に「追突事故防止」という文字を見かけて「そうだな、追突事故は良くないな。安全運転ヨシ!」と考えなおす人を想定しているのだろうか。それはずいぶん能天気だと、僕には思えてしまう。
あるいは自分自身に向けてのスローガン、標語としてのステッカーなのかもしれない。だとしたらやはり僕は「ノー・サンキューです。追突事故を防止したい、という想いは既に持っていますから」と答えたい。
そもそもステッカーが(それが何の目的であれ)小さすぎる。特に「車両後部に貼れ」という割に、それが読める距離まで近づくと追突の可能性が増大するというのは、悪い冗談のようだ。
こういう部分で妥協すると、世界はどんどん格好悪くなる。若者の自意識を吹き付けた落書きのある風景と、ある意味では良く似てくる。
しかし街を見渡すと、あるいは親類や家族を見ていると、行政から渡されたステッカーをとにかく貼ってしまう人が一定数居るようで、例えば玄関先に「詐欺・迷惑業者お断り」ステッカーなどが貼られている家庭は珍しくない。それで本当に詐欺師や迷惑業者が退散するのか、きちんと効果が測定できているのかまで考えている人は少ないように思える。さらに困ったことに、そういう(頭を使わないで)貼られたステッカーは、何年経っても放置されたままなのだ。
デザインに拘った暮らしをしろ、手間と金をかけて美しく生活しろ、と言っているのではなくて、もっと細やかな日々のあれこれを吟味するだけで、自然と暮らしは上質になりうると考えている。
というわけで、自分の精神的デザインガイドラインに従い、「追突事故防止」ステッカーは廃棄する。
そこで話は最初に戻る。
警察あるいは交通安全協会から渡されたパンフレットには、クリアフォルダが付属している。もちろん白色や透明の汎用性のある品ではない。サマーニットを着た無難な美女がにっこりと笑い、交通安全スローガンが添えられ、隅には無意味な(静岡の)ゆるキャラが配されている。
とても残念に思う。これを使う状況を思いつかない。
特に残念なのが、これが我々の税金(あるいは交通安全協会費)で作られているという事だ。今後は、真っ当な社会人として、警察あるいは交通安全協会が何かを配布していたら、用心して避けていきたい。あるいは返品する勇気を持ちたい。
考えてみたら、警察関係で貰ったグッズで役に立った品なんて一つも無い。もうすぐ免許の更新があるが、またビニールポーチか何かを渡されるのだろうか。
さて、今日は「天冥の標 8 ジャイアント・アーク PART1」を読了し(大変に面白かった。傑作)、さらに「暮しの手帖」を読み始めた。マヨネーズも思いやり100のコツも興味は無いけれど、洋風おこしは美味しそう。