書棚の設計図。


図書館のマスコット。今は中身が無い。 
書痴とまではいかないが文庫本を捨てられない質の知人から、本棚の制作を依頼された。
といっても作るのは僕ではない。板を切るところまで行う。


どの程度の大きさにするのか決める。幅は一般的だが天井までの高さを求めている。
手づくりで手間暇かけて高価になっては馬鹿らしいから、通販サイトで手頃で近い寸法の既成品を探す。もちろん休日には地元の家具屋にも行く。しかし2人で家具屋を巡っても楽しくないから、手短にする。
今はお金さえかければ、1cm刻みで幅を調節してくれる製品もある。しかし高さに制限があったり、業務用で高かったり、文庫専用にしては奥行きがありすぎる。一長一短で困る。
それに街の家具屋のものは、たいてい変な陶器風のプレート(カモのイラストとBookshelfという英単語)が貼られていたりする。安物に余計な装飾をつけるのは日本の悪癖だと思う。


という訳で、様々な検討の結果、自作をする事になった。
自己流のCADを使うまでも無い。この程度ならばAdobe Illustratorで作図できる。近所のホームセンターの規格品の板から側板と棚板を切り出す。
このカットの指示を図面にする。無駄になる部分は減らしたいし、カットの回数は少ないに越したことはない。
ホームセンターでは、メモ書きを渡せば、きちんと真っ直ぐに切ってはくれる。しかし回転ノコギリの歯の幅(あさり)まで考えてくれる店員さんと、その辺りに無頓着な店員さんの差が大きい。
その点、もう廃業してしまった隣町の合板屋は良かった。図面を見せると「この板とこの板は同じ幅に揃える。この板は正確に〇〇cmで、この廃棄部分にズレをしわ寄せすればいいね」と判断して切ってくれた。
板の価格自体は安くはなかったが、カットはタバコ代程度だったし(受け取ってくれない時もあった。彼らにとっては片手間なのだ)、そもそもこの板の精度さえ合えば、本棚作りは9割成功といえる。
しかし昨今のホームセンターでは、そこまで望めない。信頼できる店員がいつも担当してくれるとは限らない。ある程度は運であり、そこまで設計に組み込む必要がある。
その上で、ホームセンターに見せる紙は、図面というよりも、カット担当者が余計な事を考えずにきちんと作業してくれるようなイラストになる。作業者の視点で線を引く。
工作室のあるホームセンターもあるが、この合板カット装置は任せてくれない。



努力の成果か、あるいは幸運か、先ほど出来上がった板はほれぼれするほど寸法が揃っていた。重ねるとぴたりと一直線になる。
そしてホームセンターでボール盤もレンタルした。垂直な穴を開ける為には、不器用な僕は電動ドリルは怖い。長く使うものだから、道具に頼れる部分では失敗したくない。
今夜に穴あけをして、明日は知人のアパートに搬入する。先ほど部屋の中で立ててみたが、十中八九上手くいくだろう。




こうなるとD.I.Y.というよりも設計製造に近い。手先はいくら経っても器用にならない。でもそれくらいの気分で下拵えをしないと、後の調整や修正作業に苦労する。余計な道具も必要になる。
今回は、大昔に作った自分の本棚のデータを活用した。もはや本棚の自作に関しては、迷う部分はほとんど無い。
規格品の板があり、回転ノコギリで生じる誤差があり、そして最終的な外形(縦横高さ、棚の数)があるという単純な作業なのだから、こういう設計こそスマートフォンのアプリで出来ないものかと考えてしまう。
つまり、ホームセンター側が提示した板材を選び、完成サイズと棚板の数を入力するだけで、カットの指示図面は作れる筈なのだ。木ネジの数だってアドバイスできるし、Web注文だって便利かもしれない。
本棚(あるいは普通の箱でも棚でも)の自作が流行れば、そういうアプリやウェブサービスも出来るだろう。注文家具では既に珍しくない。東急ハンズ辺りには、もうあるのかもしれない。



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