百足、鰻重、アメリカンコーヒー。

 



 
もうすぐ目覚まし時計が鳴る時刻、半覚醒状態の時に首筋を何かが這う感触があった。
なんだろうと思いながらも身体を起こしたところ、脇の下に鋭い痛みが。そして細長い生き物がシーツからベッドの下に逃げていった。
しっかりとは見ていないが、おそらくはムカデだと思う。家は新しいし外でも見た事が無いが、洗濯物にでもついてきたのだろう。
とにかく急いで患部を水洗いする。見づらい場所で、傷口の特定はできなかった。
とりあえずインターネットで対処法を探す。「心臓に近い側の血管を縛る」から「ムヒかオロナイン軟膏を塗る」まで、ずいぶん沢山の意見がある。
患部を「冷やす派(保守)」と「温める派(新興)」の論争も活発。思わずネットサーフィンを続けたくなるが、痛みはどんどん増していく。
そういえば「発言小町」や「ヤフー知恵袋」系のサイトでは「医者に聞くのが常識です」とか「無闇に怖がる貴方が悪い」という厳しい声も多い。インターネットの世界は冷たい。
出来る事は全てやってみよう、という方針で、シャワーを浴びて温め、その後に氷水で冷却する。昔使っていたステロイド軟膏を塗り、さらに液体ムヒも塗ってみる。
よくアメリカ映画では鎮静剤としてアスピリンをがぶ飲みする。我が家にはアスピリンは無いので、バファリンを2錠飲んだ。大抵の痛みは半錠で効くので、2錠は僕にとっては大量摂取といえる。
バファリンが効いたのか、ただの時間経過によるものか、痛みは少しずつ減っていった。
生まれて初めてのムカデの毒牙は、なかなか珍しい種類の痛みをもたらした。スズメバチや毒蛇のような緊急性は無いが、しかし切り傷程に放置できない。ある程度の痛みが常に続く。
結果として、行わなければならない諸々(ベッドの周囲を整理整頓し、家具を動かし、潜んでいるムカデを捕殺する)の実行がとても億劫で困ってしまった。
それでもがんばり、整頓のついでに本の整理も済ませた。しばらくは新しく本を買わなくても良いと判明した。
しかしムカデは見つからない。実は今も見つかっていない。部屋の何処かに潜んでいる筈。
まあ、積極的に攻撃をする生き物ではないから、今夜は寝返りに気をつける事にする。身体に何かが這った感触があったら、慌てず騒がず対処したい。そして「液体蚊取り:ベープリキッド」に期待する。



鰻重を食べた。上等な味。
昼ごはんは、友人達と会食。今日はちょっと良いお店に行った。
久しぶりのウナギを食べた。
ウナギに関しては、5年程前から「安物は食べない。日常食にしない」という方針を立てている。これは資源量の減少を受けてのこと。今思えば、ずいぶん遅い決意だった。
特に価格に線引きはしていないけれど、かつてのように「ご飯を作るのが面倒だからスーパーの特売ウナギを買って済ませる」というのは止めた。
ウナギ養殖の盛んな土地な事もあって、持ち帰り専門店で昔はずいぶん安く買えた。最近はそういうお店がどんどん廃業している。
近いうちに全く食べられなくなるかもしれない。ウナギは好物だが、それでも全然かまわない。今のところ、狩猟肉やイワナのような感覚で「何かの機会に食べられたら嬉しい」くらいの食材だと考えている。
それはともかくとして、今日の鰻丼は実に美味しかった。ご飯の炊き加減も完璧だった。タレは上品で、さらっとしている。不思議な香りの良さがあった。
美味しすぎてぱくぱくと短時間に食べ終えてしまったのが勿体無い。屋号が「あなごや」で、穴子も扱っているようなので、近いうちに穴子丼を食べに行くつもり。




コーヒーを飲んでひとやすみ。
友人と静岡の市街地を歩く。友人はスニーカーを買うという。それで店をいくつか巡った。
台風一過の晴天。まだ風が吹き、樹の枝や葉が飛んでいる。
たぶん天気のせいだろう、休日としては気味が悪い程に、街を歩く人が少なかった(静岡の人は悪天候に弱い。大雨が降ると一日中ずっと家に篭もる傾向がある)。
途中でコーヒーを飲んだ。味は普通のアメリカンコーヒー。不味くは無いが、どこがアメリカンなのかよくわからない味だった。
スニーカーは結局、気に入ったものが見つからなかった。そして僕は、またしてもカバンを買いたくなってしまった。なぜカバンにばかり物欲が向くのだろう。幼児体験だろうか。




今日は珍しく、甘いものを食べていない。
先ほどから少し、ムカデに噛まれたところがぴりぴりと傷む。アメリカン・コミックスならば、そろそろムカデ・パワーを身につける頃合いだ。
全然関係ないが、ずいぶん前に「ムカデ人間」という映画を観た。ずいぶん悪趣味な、グロテスク描写が苦手ではない僕でも「これは気持ち悪い」と思える異色作だった。
「2」もあるらしい。イギリス人とオランダ人は、何を考えているのかわからないところがある。冗談のツボが違う。
ともあれ、ムカデ人間にだけはなりたくない。
 



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