映画『パシフィック・リム』を観た

 

1970年代から90年代にかけて、ロボットアニメや怪獣映画、それからウルトラマンのような特撮番組がたくさん作られた。
日本の子供達も夢中になったし、多少の時間差で海外にも輸出され、そちらでも熱狂的なファンが生まれた。
彼らが大人になり、自分たちの大好きだったものを自分たちの手で作るようになった。そういう映像作品は多い。というか日本のアニメや怪獣映画なんて、最近はそればかりだと思う。
ガンダム・シリーズやエヴァンゲリオンもその系譜だろう。オタクが作ったオタク向きの作品。


その、大人になった「海外のファン」のひとり、デル・トロ監督が巨大ロボット映画『パシフィック・リム』を作った。
なかなか面白そうな雰囲気なので、観に行った。



映画としては、サマーシーズンのティーンエージャー向けSFアクション映画(CG多用)で、頭をからっぽにして楽しめる。
映像のトリックとか、込み入ったストーリーなどは全然無い。単純明快。
ただ始終、鉄の塊のごついロボットが、がっちゃんがっちゃんと怪獣を殴る映画。ハリウッド的なアジア人も、たくさん出てくる。
でもなかなか「燃える展開」が多くて、飽きさせない。
子供の頃から見てきた、いろんな「お約束」がきちんと出てきて「監督、本当に日本のロボットと特撮が好きなんだなあ」と感心してしまった。
日本の特撮映画のような貧乏臭さが無いところが、羨ましいところでもある。



というわけで、大変面白く、最初から最後まで夢中で観たのだが(前の席の人の頭が字幕にかかっていたのが残念なところ)、どうしても「日米・ロボット&特撮文化比較」みたいな見方もしてしまう。
同じものを見てファンになってこじらせて作品作りをしてきたのに、国が違うとやっぱり出来上がるものが異なってくる。

日本の作品は

  • 主人公は子供。とにかく悩む。戦う意味を考える。
  • 主な登場人物は若者。軍隊に準じる組織でも、女性の比率が高い。
  • 敵側の理屈を考えようとする。心を通わせようと試みる人(神秘的なヒロインが多い)がいることも多い。
  • たとえ世界を救う力があっても、代償は大きい。
  • ロボットに「理由」がある。なぜ人型か、の理屈が大切。
  • 強い敵には、知恵とトンチで対抗する。
  • 屁理屈でもなんでもいいから、科学との繋がりを持った設定がある。必要なら新しい学問を創設する。
  • 何かしらの「学ぶところ」がある。反戦や自然保護といったメッセージを込める。

対して、ハリウッド映画(パシフィック・リム)では

  • 主人公は大人。それほど悩まないし、わりと好戦的。職業軍人
  • 上官はもとより、技術スタッフやオペレーターはおっさん。学者は変人。
  • 謎の敵は最後まで謎。とにかく悪い奴。
  • 多少の犠牲(勇気ある黒人)はあったとしても、とりあえずハッピーエンド。
  • ロボットが出てくることに理由や説明はない。
  • 敵への主な攻撃手段は「殴る」。あるいは放り投げる。各国がバラエティ豊かなロボットを建造するが、戦い方としては同じ。
  • 強い敵には、より強く殴る。それでも通じないならば核爆弾。
  • 「50基のエンジンにチタニウムチャンバー、オーバーブースト付きの核融合炉だぜ!ハッハー」等と、よくわからないが強力そうな機能説明がある。しかし技術用語ではない。
  • 全てが終わった後に「これは人類への警鐘なのかもしれない」みたいな事を言う人はいない。


となる。
個人的には日本風の作品のほうが好き。とはいえパシフィック・リムの場合は「わかっていて好きなようにやっている」感じもするし、なにより「やり過ぎ」な感じが実に楽しかった。
それにしても、火花の多い作品だった。溶接機からロボットの関節まで、始終どこかで火花が散っていた。
悪天候と夜の場面も多い。僕は2Dで観たけれど、3Dで設備の古い映画館では見づらいかもしれない。
主演の菊地凛子さんは、いかにも「ハリウッドが考えたクールジャパンな女優」という感じで、なぜか日本語まで片言な感じ。しかしそれも妙な味わいを映画に加えていた。



というわけで、たまにはこういう映画も良い。少年まんがのようなからっとした作品。
なんとなく、自宅でDVDレンタルで観たら「なんだか安っぽい作品だなあ」で終わってしまいそうな気がする。安いのはストーリーと設定だけで、映像はわりと豪華なのだけれど。




パシフィック・リム (角川文庫)

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