さよならのかけら

今日は休日。ほぼ半日を費やして、大規模な模様替えを行った。
模様替えのついでに大掃除もした。今ようやく、収拾がついた。

 

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 僕が県外の独居用アパートから今の部屋(実家の12畳)に引っ越した時は、わりとややこしい状況だった。

病気を患って寝込んだ状態で出向が慌ただしく解除され、しかも引越し前日はインフルエンザにも罹患していた。あまりに急な転居だったために、職場が配慮してくれて、ほぼお任せコースの引越し業者が手配された。その引越し業者と両親の助けを借りて一人暮らしのアパートを引き払い、今の部屋に前後不覚の状態で転がり込んだ。ベッドとパソコンと服と、それから最低限の家具だけ部屋に入れて、他の荷物は離れにある倉庫に詰め込んだ。
そんな訳で、ゼロからではないけれど、8割くらいの「一人暮らし用品」は今も倉庫にあり、必要なものはその都度買い揃えて、たまに気が向いた時に倉庫の品々を整理して、今は暮らしている。

 

そんな状態だから、この部屋は便利とは言いがたい。
でも実家暮らしだから、不便でも何とかなってしまう。沢山の物を買い足すような気分にはならないのだ。とはいえ高さ180cmはあるオープンラックの棚板が3枚だけだったり、古い書類が詰め込まれた段ボール箱(前述の引越し業者の箱)があったりと、ちぐはぐな感じは否めない。

 

今日は思い切って、その"ちぐはぐ”を解消した。もちろん楽な作業では無かった。
倉庫から必要な品々(一人暮らし時代に吟味した逸品たち)を回収し、部屋にある不要品を分別し、模様替えをしながら必要な物だけを収めていく。「悩んだら捨てる」がスローガン。なにしろ今まで無くても不自由なく暮らせていたのだから、大抵の物は捨てても構わないのだ。途中で「HARD OFF」に勤めている知人に連絡をとり、引き取ってもらえそうな品を参考意見として聞いた。本も整理した。


引っ越しの時にはぼんやりしていてやり過ごしてしまった色々な想いに、今日の片付けではまともに付き合うことになった。それは寄せ書きやアルバムを見るよりも大変な事だったけれど、とはいっても「物は物」である。既に過ぎ去った出来事ばかりで、精神は揺さぶられながらも、手はきちんと動いていた。「物は物なり」とは以前の上司の口癖だったが、その無意味な言葉を心の中で繰り返していないと、30代後半の大掃除は進まない。



途中、16時過ぎに、ふと部屋全体を見渡して、カオスの臨界点というか、「もう永遠に片付かないのではないか」という惨状に気が遠くなった。しかし、この状態がいちばん過酷であり、黙々と手を動かせば秩序と平穏と清潔がやってくることくらいは、僕でもわかる。わかるけれど疲れた。そして何の作業であれ、16時というのはピークを迎えるのには手遅れな気がしてしまう。外は既に暗くなっていた。



そして今、ようやく「今日はここまで」という区切りが訪れた。明日以降にやる作業は、見栄えを整えるような瑣末な事だけ。部屋の隅には処分を待つ品々が積んであるけれど、それは適切なタイミングと手段で減らしていけばいい。

 

 

それにしても、我ながらよくわからない品々を溜め込んでいる。フリーマーケットに3回くらい出場できそうな数の、文房具と雑貨と金属部品。沖縄旅行で買ったらしいが思い出せない「紙銭」なんて、何に使うつもりだったのか。服の予備ボタンや編みかけの毛糸や、ブランデーのミニチュアボトルまであった。
もしかして自分は、老いてから「ゴミ屋敷」を築くタイプなのか。それは嫌だ。



今思えば、数年前の一人暮らし時代は、ずいぶんと「生活を工夫する」ことに夢中になっていた。親の目は気にしなくていいし、学生時代と違って金銭的な余裕はあるし、仕事からのフィードバック(工作技術から不要部品の流用までの諸々)も十分に活用できた。同世代の友人達が車などにお金を注ぎ込んでいる時に、僕は「平積み専用本棚」や「自分のニーズに完全に合わせたキッチンワゴン」を作っていた。
あの頃の品を、今になって倉庫から引っ張りだして使ってみると、ありあわせの既成品で間に合わせた最近の物よりも、ずいぶん質が良くて使い易いことがわかる。使うにあたって少々の改良が必要な場合がほとんどだが、とにかく当時の"技術レベル”には驚かされる。そのままでは「アイデア先行」で使いづらくても、パーツ単位では「その辺では売っていない」ものもある。
古くて優れたものをサルベージして使うなんて、まるで「風の谷のナウシカ」みたいだ。でも本当に、あの一人暮らしの数年間は、ちょっとやり過ぎなくらいに贅沢に「暮らし」の改善活動をしていたのだと実感する。若者がはじめての一人暮らしで部屋を飾り立てるのとは違う、個人的なムーブメントのようなものが、確かにあった。
また一人暮らしを始めるにしても、あの頃のようにはできない、気がする。



祈りと署名 (ビームコミックス)

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