ゼムクリップとクリアフォルダ

 
 
ゼムクリップとクリアフォルダは、人生で使い切れない程持っている、つもりだった。



ゼムクリップは変わった形のものを輸入雑貨店で買ったり、何かのイベントで必要になってまとめて購入した。
他にも、昔の勤め先で使用禁止になって(巡り巡って商品に混入する危険を避けるため)、用済みになったものを貰ったこともある。
普通に生活していて、書類についてきたものを貯めているだけでも、結構な数になる。
「生涯で十分な数のゼムクリップを持つ」というと「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド村上春樹」の主人公みたいだが、別に意識したわけではない。
しかし、読み返していて気付いた時に、ほんの少し「ゼムクリップをたくさん持つのも悪くないじゃないか」と思った事を覚えている。



クリアフォルダも、何かの折にまとめ買いして、十分な数を持っていた。あればなかなか便利なものだ。
休職中にはどんどん書類が送られてきて、それは大抵、封筒の中でクリアフォルダに挟まれていた。会社というものはクリアフォルダを惜しまないのだと知った。




そのクリアフォルダの在庫が尽きた。
個人で書類のやりとりをする事は少ない。無尽蔵にあると思い込んでいた。
例えば頼まれたショップカードの見本を渡す時に、いつもクリアフォルダを使っていた。




無くなってしまうと不便だ。
安いものだから買い足しても良いのだけれど、この機会に何か気の利いた書類入れに切り替えてもよいのではないか、と思っている。そういえば、紙のフォルダ(Windowsのフォルダアイコンのような)を使った事が無い。
そしてぼんやりと、友人知人の手に渡りどこかの引き出しに収まっている、かつて自分のものだったクリアフォルダの事を考える。
大切に扱ってくれとも、捨てないでくれとも思わないし(もちろん返してくれとも思わない)、なにしろクリアフォルダなので風情も何も無いのだけれど。




ゼムクリップは、引越し荷物に紛れて出てこない。
一人暮らしのアパートから実家の部屋への引越しだったから、仕舞いこんだままの文具や本は多い。いつか発掘せねばと思いつつ、離れの納戸に放置している。



実は10枚以上、使えないクリアフォルダが残っている。
勤め先の本社との書類のやり取りで送られてきた、俳優の織田裕二氏がにっこりと笑っているフォルダ。会社のイメージキャラクターだったのだ。
これは使いどころが難しい。会社名も入っているし、なんとなく友達へは使えない。
ファンには喜ばれそう。でも今まで、彼のファンという人に会ったことがない。




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