ポット救出

今ではちょっと考えられないが、昔はコンビナートの敷地内で福利厚生全般を行なうのが当たり前だったらしい。工場(職場)の敷地内に喫茶店があって、少し前まで営業をしていた。
茶店の他にも、体育館や売店、ATM、視聴覚室、講堂兼映写室、共同浴場弓道場からテニスコート、そして図書室まである。何でもあるみたいだが、今では利用者は限られていて、半ば廃屋になっている場所も多い。

茶店は社員食堂棟にあって、昼休み限定でコーヒーや煙草を売っていた。
昔はともかく、自販機のコーヒーにブラック(無糖)が登場してからは、お客も少なくなっていたらしい。
そしてついに、半年前に閉店してしまったのだ。

 

もともと休憩室としても使われていた部屋なので、カウンターや水周りはそのままに残されていた。そして時々は給湯室代わりに使われながらも、放置されていた。
しかし今日から(唐突に)大掃除が始まって、残っていた食器やコンロは片付けられることになった。

こういう時の古株社員というのは容赦が無い。
次々と古いものを分別ゴミ箱に放り込んでいく。
もちろん、ほとんどは再利用できないガラクタなのだが、長く使い続けた道具や設備は好きな人から見たら大変なお宝だ。今では見られないデザインの蛇口、妙に凝った形の栓抜き。そんな物が、あっという間に捨てられていってしまう。
ベテランの彼らにとっては、古ぼけて見飽きた“つまらないもの”ばかりなのだろう。
でも、例えば街に持っていってフリーマーケットにでも出せば、それなりに買う人がいそうなものばかり。
とても勿体無い。
それに、知恵を絞れば、まだまだ使えるものも多い。

何となく歯痒い思いで作業を眺めていたら、知り合いの社員がいたので声をかけてみた。
無駄話をしながら(僕は帰宅前だった)ゴミの山を見渡してみると、立派な琺瑯製のポットが捨てられる寸前だった。
裏を見ると月と兎のマーク
少し欠けているが、磨けば使えそうだ。家で使うには大きすぎるが、とても素敵なデザイン。思わず適当な事を言って、貰ってきてしまった。しかも2個。恐らく、コーヒー用の湯沸しに使っていたものだろう。
最近よく見かける、月兎印のコーヒー用ポット(ケトル)を大きくしたような形だが、ちょっとずんぐりしている。色は白。ハンドルだけ黒い。

もう1つ、これも大きめの、総ステンレス製の細長いケトルも貰ってしまった。
汚れているので、磨き甲斐がありそう。
茶店では珍しくないかもしれないけれども、個人で持つのは酔狂かもしれない。
でも、こういう品に弱い。

 

貰えたのは嬉しい。でも、琺瑯ポットを2つ持っていても仕方が無いので、1つは友人にあげることにした。
残りはとりあえず薬剤に漬けておく。明日の夜に綺麗にして、錆も落とす予定。

良い拾い物をした、と思う。
明日、もう一度ガラクタの山を漁ってみたい。

 

 

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