ここ数週間、仕事ばかりしていた。
休暇に入ったら
「今まで行きたかったけれど行かなかった場所」
を訪れようと心に決めていた。
京都、奈良、神戸、そして大阪。
車でも電車でもあっという間なのに、なかなか行く機会が無かった。
行けば楽しいのは判っていても、情報不足で1人でぶらついても、無駄が多そうな気がしていた。
昔親しかった友人に言われたように「失敗するのが怖い」のだろう。
今回は『ダリ展』に行く、という明白な目的があった。
東京での展示を見逃してからも、ずっと気になっていた。
うっかり忘れないように、ポスターをトイレに貼っておいたくらいだ(昨年度のトイレのカレンダーもダリでした)。
そんな訳で、まったく予定を考えずに、「明日は大阪に行こう」と決めたのが一昨日の昼間。
大阪に詳しそうなマイミクさんに、「お奨めの場所等あったら教えて下さい」的なメールを送ってみたら、いつのまにか(嬉しいことに)一緒に行くことになった。
日帰りのつもりだったので、とにかく早く着く為に往路は新幹線を使う。
新幹線は乗るだけで嬉しい乗り物だ。でも割高。
あっという間に京都、そして大阪に到着した。
駅の近くでマイミクさんと合流し、まずは昼食へ。
大阪は全く知らない土地なので、完全に相手任せ。
いつも大阪駅の近くをぶらつくだけで、あまり面白い場所を知らなかったのだが、話を聞いてみるととても楽しそうだ。
それは良いのだが、案内人は地図本まで持っているのには恐縮してしまう。
とはいえ、とても心強いし、行ってみたお店は何処も素晴らしかった。
昼食はエスニック・カフェでカレーを食べた。
隣にネコが寝ている席に座ったのだが、このネコ(名はシロ、白くない)が実に素晴らしい。
ずっと丸くなっていて、どんなに触っても動じない。
これが仕事だとしたら、とても羨ましい、と思った。ネコになりたい。
天保山に移動し、ダリ展を観覧する。
ダリ、と言えばぐにゃぐにゃの時計だったり、蟻だったり、燃えるキリンのモチーフだったり、さらにはチュッパチャップスのデザインが有名だけど、彼の生涯を作品とともに眺めると、なにしろ圧倒されてしまう。
戦前に生まれ、現代美術のスターとしてつい最近まで生きていた人なのに、彼のことをあまり知らなかった。
ほとんど挫折というものを体験せず、いつも新しいことを“やりすぎな位に”進めていく天才。
変人かと思っていたが、自分のやっていることを常に意識できている、という意味ではとても理知的なタイプだと思う。
そんな人の世界を、ものすごいボリュームで見せられたので、ミュージアムを出た時には疲れ果ててしまった。
夢の話を人にしても上手く伝わらないように、この展示も口伝えでは伝え難いものがある。
良い映画にのめりこんだ時のように、外に出てからも色んなモノが“ダリ的”に見えて困ってしまった。
再び大阪の街中に移り、デパートの屋上をぶらついたり雑貨を見たりして過ごした。
静岡で何度か会ったことのあるもう1人の友人と合流し、カフェでお茶をした。
こうして再会してみると、人の縁の不思議を考えてしまう。
数日前には会うことなんて想像もしていなかった。
街をぶらつき、古いビルに入っている「ベルリンブックス」という古本屋に行く。
小さな店だが、店主の好きなものしか置いていないので(そして自分と興味の範囲が近いので)、とても密度が濃く感じる。
実際に欲しい本が沢山あったし、どれも驚く程安い。
色々悩んで、3冊ほど購入した。
ビルの中を散策したり、可愛い雑貨屋さんを覗いたりした。
新しいカメラを試したくて、1人で歩き回ったら迷ってしまった。
夕食はお好み焼き。
軽くて、面白い味付け(トマト味多し)の美味しいお店だった。
色々と喋っていたら、終電の時刻はとっくに過ぎていた。
急いで帰る必要も無いので、泊まるのには抵抗は無かったけれど、土地勘が無い場所でホテルを探すのは少し不安だった。
2人に判りやすいホテルを教えてもらって、そこの前で別れる。
地下にチョコレート屋さんが入っている、なかなか豪華そうなホテル。
フロントに聞いてみたら、シングルとツインは満席だった。
少し夜の大阪も楽しみたかったので、1人でとぼとぼ歩く。
一人旅のノウハウ「宿に困ったら、商売人の町を探せ」を思い出し、問屋が多そうな(夜は真っ暗な)ビル街に入っていくと、本当にビジネスホテルがあった。深夜からの入室なので安かった。
今日は早めに起床。
熱いシャワーで無理矢理目を覚まし、出発する。
明るくなってから判ったのだが、泊まったのは繊維問屋街だったらしい。
面白そうな店も多いが、今日中に四日市で片付ける仕事を思い出し、とにかく帰ることに注力する。
朝食ににゅうめん(かやくご飯付)を食べる。
普通の安飯が美味しいのが大阪の良いところだと思う。
帰りは近鉄電車を使う。
職場の連中が強く勧める(意外と速いうえに運賃が安い)ので、この際にルートを覚えていこうと思っていたのだ。
しかし知らない地名駅名が多く、しかも小さな駅での乗り継ぎが何度かあったので、何度か迷ってしまって、用の無い奈良や天理にも行ってしまった。
途中で車窓から見た、郡山城の辺りが気になっている。
城の敷地に、普通の家が見えた。少し離れたところには、立派な古墳(だと思う)もあった。
いつか行く気がする。
寝ているうちに四日市に到着。
急いで銀行に行ったり、郵便局で手続きをする。
妙に疲れたので、菰野町まで行ってケーキとチャイで休憩した。雑貨屋でCDや本も買う。
夜には結婚式の招待カードを作った。
明日、帰省するというのに、全く準備が進んでいない。
服もパソコンも自転車も持っていくし、しばらく部屋を空けるので冷蔵庫も片付けたい。
でもまあ、眠いし疲れたので、明日何とかすることにして、早めに寝る。