粟島と高見島 ─ 瀬戸内国際芸術祭2019 ─

秋会期の瀬戸内国際芸術祭2019に参加してきた。
今回は「西の島々」のうち、粟島と高見島。
本当は伊吹島も行きたかったけれど、さすがに出発港の離れたところは無理。時間を気にしてスタンプラリー的に回れば行けそうだったが、それでは芸術イベントとしてもったいない。

今日は疲れているし明日も早いので、とりあえず移動や食事のみ。アートの話は後日書く。

須田港

今回は粟島から高見島という順番で島を巡る。
この場合スタート地点は三豊市の須田港。
小さな「渡船場」みたいな港で、駐車場は徒歩なら30分かかりそうな別の埠頭にある。無料のシャトルバスが往復しているし、駅からのシャトルバスもあるから不自由しないが、便利とはいえない。

おそらく「本島-高見島-粟島」という順番が芸術祭の想定する基本ルートなのだろう。
その場合は多度津港から島に渡る。交通の便も良いし、何より船の本数も多い。混雑している時は船が大きいほうが予定通りに移動できる*1。この芸術祭では大切な事だ。

それに何より、この須田港と粟島との船は、午後の便数がちょっと少ない。15時少し過ぎに須田港に戻る便を逃すと、次は17時以降となる。
僕は粟島で午前中を過ごし、また帰路に粟島に戻った。その時に1時間以上の待ち時間が生じて困ってしまった。粟島は面積のわりに展示自体は(分布も内容も)コンパクトで、しかも港周辺に集まっているため、帰路に粟島に行ったほうが色々と楽だと思う。夕方まで粟島で過ごしてから、本島へ戻り、そこから四国や岡山へ行けばいい。

今日は帰路の粟島で「17時過ぎまで船はありません」と言われたものの、数十分で臨時便を仕立ててくれたので助かった。島も運営も、この辺りは柔軟である。何しろ須田港から粟島までは10分程度だ。

 行程における反省はこのルート選択について。いや最初に粟島に行って、粟島をのんびり堪能できた事に後悔はしていないのだけれど。

島巡りでは自家用車が行動の足かせになる(こともある)。高松など大きな港ならともかく、小さな港が拠点になると帰路が面倒。この辺の問題は、前日の夜中に思い立って「行けばなんとかなる」と出発便のみ調べる無計画さが原因なので、きちんと芸術祭のWebサイトを調べれば回避できるはずだ。

100の指令

100の指令

 
美 (考える絵本)

美 (考える絵本)

 

 

粟島

元は海軍の学校があった。昭和の時代には少年自然の家的な施設や海水浴場、それに漁業の基地があった。芸術家達のコミュニティも存在した。
というわけで、関連した展示が多い。


日比野克彦氏がずいぶん前からここで活動している。
自分としては、人生で最初に触れた日本人現代アート作家が日比野克彦氏だったと思う(英和辞典の表紙だった)。

地図で見ると、島はそれなりのサイズがある。3枚羽根のスクリューのような形をしていて、海岸線も長い。
しかし展示自体はこのスクリューあるいはプロペラの中心、ハブ部分に集中している。日比野氏の展示のみ、少し歩いた浜辺にあるけれど、6人乗りの電動カートがあるから時間もかからない。

廃校を会場にした展示、海軍学校の建物に入っている展示がメイン。とはいえボリューム的にはそれほど大きくない。じっくり眺めれば長時間過ごせるけれど、眺めるだけのものばかり。実際、船の時間が気になる人達は、ぱっと見て興味が無いところは流し見で済ませていた。

この島で昼ごはんの時間になった。
1軒、お洒落なカフェがあった。そこそこ混雑していたが、犬島や豊島のそれに比べたら大したことはない。
地物の丼やおにぎりセットが食べられるようで、なかなかに魅力的だったが、混雑していたし、タイもタコも普段から食べているので「わあ地物の魚介だ」と盛り上がることもない。そもそも朝にたっぷり食べたのでお腹も空いていない。

ここでは、コーヒーとぜんざいで一服しただけ。高見島へ渡る船を待つ間に、家から持参した姫りんごを食べて、お昼ごはんの代わりとした。風景が素晴らしいから、わざわざカフェごはん(タコライスとか)を食べることもあるまい、というのが個人的な意見だ。

 

せとうち暮らしvol.09

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せとうち暮らしvol.11

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高見島

粟島から船で20分程度。それほど時間はかからない。
この島は山がちの集落が会場となっている。

細くて急な階段沿いに古い日本家屋が連なる独特の景観。この風景だけでも来た甲斐がある。

港周辺には少しだけ飲食店がある。といっても一般家屋や民宿が持ち帰りのごはんやうどんを提供しているだけ。粟島に比べるのも変な話だが、こちらの食事は安い。タコ飯やじゃこ飯が400円(持ち帰り)で、缶のお茶も付いてくる。
隣の島では1600円でワンボウルのお洒落丼があるのに、だ。
僕は菜飯*2を買って、海を眺めながら食べた。

 

ところで、粟島でもこの高見島でも、まるで瀬戸内国際芸術祭に関連しているかのような地元アーティストや手芸作家(というか手芸趣味のおばちゃん)の臨時店舗があって、ちょっとだけ気になった。他の土地のアートイベントでも勝手連的な、あるいは便乗でのアートっぽい催しは多いけれども、きちんと“本家”と区別が付くようにしている*3。パロディ的に「便乗企画」であることを掲げているのは、どこかでそれが立派な事ではないとわかっているからだろう。
でも今日は(というか夏の会期でも)そうではない感じの店や展示が目についた。本家なら許さないような商売っ気のある客引きの声やCDラジカセでのBGM、パワーストーンのブレスレット。縮めると「瀬戸芸」になるようなイベント名。自分が芸術家なら、そういうやり方はしないだろう。
真夏にはそれなりの観光地になる場所だから仕方がないのかもしれないけれど、便乗するのならリスペクトが欲しいところだ。

 

高見島は、展示の数だけなら粟島と大差無い。
とはいえ、急な斜面を登り、点在する展示を見てまわるせいか、意外と時間がかかる。それぞれの展示作品が古民家を利用したものであるため、多少は入場に際し待つこともある。
最初に書いたように、高見島を先に回ったほうが良いのは、これも理由だ。粟島に比べて時間調整がしづらいのだ。

自分が見た限りでは、本島に行く前に立ち寄る、あるいは本島をメインにこちらがサブの目的地、といった人が多いようだった。

僕も三年前は本島を堪能した。あの島は広さもあるし、島のあちこちに作品がある。港で話をした人達は「島といっても全然違いますねえ」と驚いていた。なぜか得意げに「そうなんですよねー」と返答してしまった。僕の地元でもないのに。

ちなみに今日の粟島と高見島は、思っていたよりも空いていた。
「瀬戸芸の混雑」を覚悟していたけれど、混雑の為に何かが出来なかった、という事は無かったと思う。
場所によっては、視界に他の参加者が誰もいない、といった状況も何度かあった。小豆島や豊島のような「東の島々」の会場に比べて、外国人旅行者が圧倒的に少ないことも人が少ない理由だろう。日本人は老人が多く、外国人はアートの勉強をしているような人達が多い印象。本島まで行けば、また違っていたのかもしれないが。

 

[カラー版] 瀬戸内海島旅入門

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帰路

再び粟島へ。先に書いたように、ここで夕方まで待つつもりが、突然の臨時便により16時過ぎには須田港に戻ってくることができた。

ピカソ」なる奇妙な名前のスーパーマーケットが気になるが、後日の課題として今日は帰宅。高見島の石段でいささか足が疲れているし、明日は忙しい。それに睡眠不足で眠くなりそう。

途中で通った丸亀市で、ジャズが流れるうどん店に立ち寄り、簡単な夕食とした。細めで、つるつるして滑らかな、上品なざるうどんだった。ここは海老天のうどんが有名らしい。僕は初めて入る店で「この店に来たのなら、これを食べなきゃ」という品を“外す”ことが多い。しかも注文した直後に気づく。知らなければ幸せだったのに…と思いながら今日もざるうどんを食べた(でも美味しい)。

行きは時間的な問題で高速道路、帰路はのんびり国道。朝8時過ぎに家を出て、18時には帰宅してシャワーを浴びていた。これくらいの日帰り旅がいちばん楽だ。

 

しかし加齢とは恐ろしい。坂道と日照がこんなに体力を奪うとは。目が疲れて、膝が変な疲れ方をしている。帰路、イオンに寄ったのだが、たぶん歩き方が変だったと思う。

とりあえず今日はもう寝ます。おやすみなさい。
ともあれ、すばらしい1日だった。昨晩の11:50からの計画にしては上出来だ。

 

瀬戸内国際芸術祭2019 公式ガイドブック

瀬戸内国際芸術祭2019 公式ガイドブック

 
Casa BRUTUS(カーサ ブルータス) 2019年 8月号 [アートを巡る夏の旅。]

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お題「今日の出来事」

お題「行きたい場所」

 

 

*1:あまりに人数が多いと乗りきれない事もある。臨時便が出れば良いが、思わぬ待機や迂回を求められる事も多い。
船は乗員数の管理にことさら厳しい。

*2:瀬戸内海の郷土料理。かまぼこや青菜が入った混ぜご飯。

*3:例えば松本市のクラフトフェアでは街中がそういう雰囲気になる。でも雑貨や民藝の本場でもあるため、きちんとその辺は弁えている。

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