「チャンピオン です」

最近、貧乏臭い話と、自転車の話と、家事炊事の話しか書いていない気がする。あとは「もしかすると奇妙な話」を少し。
どういうわけか、四国に引っ越してから半年経っても、まだこの土地に落ち着いた感じがしない。大袈裟に言うと、“旅行者気分”がどこかに残っている。
そして今、自由な時間が増えてあちこちに出かけ、ぼんやり考える余裕が出てきたことで、その「旅行者気分:馴染まない感じ」が鋭敏になっている可能性はある。ある種のアンテナが感度を増しているのだ。
住み始めた土地を飽きずに楽しめる、という点では素晴らしい事だと思う。昔の友人のなかには放浪の果てに北海道や愛知を経てインドに移り住んだ果てに、ついに連絡がとれなくなった男もいる。彼は1年も経たずその土地に飽きていた。四国の香川という穏当な土地で楽しめている自分は幸運といえよう。

 

カメリ (河出文庫)

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さて、今日の、もしかすると奇妙な話。

午前中は家にいる必要があった。
書留が届くことになっていたのだ。だから、家事をしながら部屋で郵便配達を待っていた。

11時過ぎにドアカメラ*1のチャイムが鳴った。
モニターにはぼんやり人影が映っている。使用頻度が低いこともあり「いつかレンズ周りをメンテナンスしなければ」と思いながら放置していて、今日も写りが悪い。たぶん埃が水滴がカバーに付いているのだろう。

とにかくピンポンと鳴ったからには返答をしなければ。
応答ボタンを押して「はい」と声をかける。

すると当然、相手は返答する。この言葉が、変だったのだ。

「チャンピオン です」

と聞こえた。

自分はてっきり郵便局員だと思っていたので「はい?」と聞き返しながら、すぐに応答ボタンを押してマイクを切ってしまった。
どうせモニターから数メートルのところに玄関ドアがあるのだ。ドアを開ければ来客者がいる。

そしてドアを開けたところには、普通の、当たり前の、郵便局の配達員さんがいた。
サインをして書留を受け取り、お礼を言う。「ご苦労様、ところで誰か他にいました?」と聞くが、「いや別に」と、不審なところはまるで無い。

あの「チャンピオン です」という声は何だったのか。
思い返すと、声の質も、書留を届けてくれた初老の郵便配達員とは違う気がしてきた。ではどんな声かというとまるで思い出せない。ただ、テレビCMの企業名コールのような、無個性さだけが頭に残っている。
「チャンピオンでーす」とか「お世話になりますチャンピオンでございます今お時間よろしいでしょうか?」ではなくて、「チャンピオン です」と、きちんと区切った言い方も奇妙だ。

なんとなく今もドアカメラの室内端末(?)が気になってしまう。また来たら、きちんと会話をしてみたい。

 

これが今日の、怖くもないし、その後何かあったわけでもない、ただちょっとだけ奇妙な出来事。
これで、今夜いきなり「チャンピオン」が来たら面白い。村上春樹の短編みたいだ*2

 

オバペディア

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今になって気づいたが、これは「あなたがチャンピオンである」という指摘あるいはアドバイスの声という可能性もある。つまり、ニューエイジかスピリチュアルか何かその方面の存在が、僕の部屋のドアカメラ(のスピーカー出力ユニット)に干渉して「君はチャンピオンだ」と教えてくれたのだ。何かしらの超自然的理由で、郵便局員が来たタイミングを選んで。

しかし当然ながら、自分にはそんな事を言われてもどうしようもない。せめて何かのチャンピオンであることを伝えてくれなければ困ってしまう。
大抵のオカルト話と同じく、超常現象的メッセージというのは、一般常識に欠ける。あと一言が足りなくて一般人が困るケースが多い。

 

 

東京奇譚集 (新潮文庫)

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物語は人生を救うのか (ちくまプリマー新書)
 

 

お題「今日の花」

お題「これって私だけ?」

 

*1:2部屋の単身用アパートにしてはオーバースペックな装備だと思う。接続すれば同じメーカーの電話機とも繋げられるらしい。

*2:飲み物は何を出せば良いのだろう。我が家には酒といえばラム酒しか無い。簡単な食事なら作れるけれどコーヒー豆も切らしている。