重荷を置いた日 ──退職しました──

予定通り、仕事を辞めた。
今日はパソコンなど仕事道具の初期化や再設定、そして発送といった仕事をして1日を過ごした。結局、最終日まで残業となった。
引き継ぎ先の人達が「メールも他のツールも全部そのままで送ってくれ」と言ってはいたが、自分達としては送信内容に社長や役員宛の親展じみた内容もあるので(そうでなければ宛先は“全社員共有”メーリングリストにしている)全てそのまま渡すわけにはいかない。だから、残す情報とそうでないものを吟味し、フォルダ毎にアクセス制限を設定するなどしてから引き渡しとなる。
そもそも宛先を指定できるメッセージツールを「後で読みたいから、そのままで良い」と言えてしまう人に、本当にそのまま渡すほど能天気ではない。

有料サービスを停止し、MacWindows自体のログイン設定も見直して、とあれこれ手を動かしていたら時間はどんどん過ぎてしまう。

幸いなことに、土日は自分の新しいパソコンの設定に関わっていたため、慣れないWindows10も操作に迷うことは無かった。好き嫌いで言ったらMacが好きで使いやすいが、Windowsも「我慢ならん」というほど酷くはない。

 

ところで今日、この最後の片付けと荷造りをしている時に、不思議な体験をした。
肩こりが、どんどん楽になっていったのだ。

楽といっても現状でも世間一般のレベルでは普通に肩こりなのだが、今朝までとは全然違う。温泉にしっかり入った直後のような、こわばった筋肉に血が通う感覚さえあった。

朝は妙に早く目覚めて、それから仕事の事を考えて眠れなくなり、出勤した時だって頭痛がした。そういえば、一昨日も昨日も、新しいパソコンが来たのに、あるいは甥姪が遊びに来たのに、疲労感が“壁”になって、どこか集中できなかった。
時間があっても、まずは身体を休めたいと考えてしまう。たぶんここ10日くらい、そういう心身の状態だったのだろう。
食べ物を美味しく楽しめたことが奇跡に思えてくる。

 

ともかく、今日は出勤して、手を動かし始めたらいきなり身体が楽になってきた。
所属は別だが多くの時間を共に過ごした別会社の人(彼も今日が退職日だ)もわざわざ別の部屋からやってきて「なんか今日、身体が楽じゃないですか?」と驚いていた。

 


昼には2人で「今日は不思議と腹が減るなあ」と言いながら、中華料理店に行って「海老の唐揚げ定食」を食べてきた。天ぷらみたいな衣、でも味はしっかり就いている。子供の頃から好きな店と味なのだ。ご飯は少なめにしてもらったけれど、もりもり食べた。僕も彼も、中華のランチなんてここしばらく食べていなかった。昼はサンドイッチで済んでいた。

パソコン、モニター、プリンター、そういうものを運ぶ軽めの肉体労働さえ心地よい。有効なストレッチをしているような感覚があった。

 

たぶん本当に、この仕事が辛かったのだろう。
大事にならなくて良かった。あともう少し頑張る、という当初の予定だったら本格的に「鬱病」になっていたかもしれない。

 

知性は死なない 平成の鬱をこえて

知性は死なない 平成の鬱をこえて

 

 

いくつかの「今後、自分と元仕事仲間に理不尽な矛先が向かない」ように仕込みはしたが、退社にあたり「地雷を埋める」ようなことはしていない。
意に添わぬ事、不愉快に思う事がどんどん増えていく数ヶ月、恨みつらみは多けれど、最終的には「わかってくれる人が数人いる。それでいいや」と気持ちにけりがついた。
精巧なトラップからささやかな嫌がらせまで何だってできる状況ではあるけれど*1、そして技術的には(引き継ぎ先メンバーの低い技術レベル故に)ばれないようにすることも容易だが、なんだかそういうどろどろしたものも、最終日の慌ただしさと開放感で面倒になってしまった。

この仕事、社長以下役員の方々には本当にお世話になっている。
仕事仲間達とは別のかたちで、好きな人達なのだ。
だから会社にはできるだけ迷惑をかけたくない。疲れても腹が立っても、退職するまで真面目に働いたのは彼らのためでもある。

 

 

 

そして、退社後も何かしら関わる可能性がある会社でもあるのだ。
やることをやって堂々と辞めたほうが、後々のためになる。
たとえ「自分勝手に辞める裏切り者」と呼ばれようが、理不尽に理不尽を返すのは僕のやり方ではない*2。今回は能力的に自分が優れているから、尚更のこと。
ぐうの音も出ないほど真面目に仕事を片付けて、「じゃ、後は頼むね」と伝えて去ることができた点は、我ながら鮮やかだった。身体は上述の如くギリギリだったが。
それでも彼ら、自分達の出鱈目さに気づかない人達は苦労するだろう。それは僕の責任ではない。

そういえばここしばらく日記の内容が仕事の事ばかりだった。
自分で思っている以上に瀬戸際だったのかもしれない。

 

しかし、体調の(良い方への)急変に驚いて、仕事を辞めた感慨というものがそれほど無いのは変な感じだ。自宅からわりと近くいつでも遊びに行けること、苦楽を共にした仕事仲間達が先週末に退社済みであることも、このあっさりした感覚の原因だろう。

まあいいや、とにかく一旦、これで区切りだ。
縁は続くし運命の歯車は回り続ける。ともあれ、変な1年だった。

 

 

 

他人は教えてくれない 会社を辞めるときの手続きガイド

他人は教えてくれない 会社を辞めるときの手続きガイド

 

 

 

 

*1:移転や倒産による退職となると、備品の盗難など不正も増えるという。以前、工場を閉鎖するプロジェクトに就いていた時に、最後の1週間だけ「モラルのタガが外れた」状態の人達が増えて、ちょっと怖かった。

*2:こう書くとなんだか立派な人間みたいだが、職場にとんでもなく仕事ができない、ルールも守れず感情を他人にぶつける、でも社長の親族という理由で辞めない人間がいると、誰だって立派な人間として振る舞うようになるものなのです。

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