工場見学で質問すべきこと

信越地方に日帰り出張。
そんなにかしこまらない、普段着での工場訪問。

 

元々、工場に勤めていた期間が長いから、どんな工場でも楽しめてしまう。
おべっか、というわけではないけれど「何か質問は?」と工場見学の後に聞かれた時には相手を褒めつつきちんと質問ができると良い。
そして、かつて「徹底的に品質管理に厳しい工場」と「安全管理には教科書以上に取り組む工場」で働いていた経験が活きてくる。傲慢に聞こえるかもしれないが、雑な工場で働いていては見えないものが僕にはわかる。色々あったけれど、真面目に働いていて良かったとしみじみ思う。

 

ところで、工場見学には、質疑応答の時間が必ずある。
「製造現場」を見せてもらった後にホールなり会議室なりに移り、そこで「これで工場見学は終わりです。おつかれさまでした。何かご質問はありますか?」と案内役の人が問う。
問われても何も聞くことがない、でも何か問わなければならない、そんな時はとりあえず整理整頓について話すのが無難かつ最良だと思っている。
「素人意見ですが、失礼ながら○○工場というのはもっと乱雑なものだと思っていました。今回見学していちばん驚いたのが、とても整理整頓が行き届いていることです」と言えばいい。
たいてい、お客さんを通す製造ラインは片付いているものだ。というか、工場は片付いていないと仕事にならない。ものを作る時には、何かしらの片付けは必須なのだ。
その後にこう訪ねる。
「何か特別な活動などをしているのでしょうか?」
相手を褒めつつ質問もできる。
整理整頓を奨励しない工場なんて無い。そして、工場を案内する人間は、その整理整頓を推進する側にいる。リーダーや管理職ならば、何かしら即答できる。

たいして興味が無い技術的なことをひねり出して質問するのは、とても難しい。
例えば、見学中に気になった機械があったとしても、的外れな質問ならば、相手だって困ってしまう。これはある種、ビジネスマナーの問題なのだ。


先に推奨した「整理整頓されていることへの言及と、その取り組みへの質問」の最も優れている点は、最後に「なるほど勉強になります」と、あたかも自らの糧になったかのような締め括りができることだ。これが「工場見学の途中で見かけた変な機械についての質問」だと、せいぜい「…ご理解いただけましたか?」「はあ解りました」程度で終わってしまう。

同様に「安全」について問うのも良いと思う。
「進入禁止の柵があちこちにありました」とか「沢山の刃物があって、みなさん丁寧に扱っているのが印象的でした」みたいな“発見”を語りつつ、「これだけ大きな機械が動いていると、安全を確保するのも工夫が必要かと思います。皆さんで何か取り組んでいることはありますか?」みたいなざっくりした質問をすると、特に工場長レベルの人は回答しやすい。
阿呆な人は「ルール違反をする人はいますか」とか聞いてしまう。

それ以外には「環境」ネタも便利だけれど、これはやや高度かもしれない。工場というのは原理的に地球環境を汚す側なので。
そのうえで精一杯、それこそ一般家庭の何倍も環境対策を行っているものなのだが、それでも限界はある。
その限界を、素人は無意識に突いてしまう。工場側は「そこは今後の課題なのですが……」と言葉を濁さざるを得ない。

 

大人になってからの工場見学となると、取引先、業務上の関係が深い相手が多いと思う。だからといって、この質疑応答の時間に、あまり具体的な追求や提案はしないほうがいいと僕は思う。それは別の会議の場ですればいい。現場の人だって困ってしまう。

 

ねこの風つくり工場 工場見学のお客さま

ねこの風つくり工場 工場見学のお客さま

 

 

なんでこんなことを書いたのか。
今日は工場見学の後で、案内してくれた人達から「取引先を案内することは多いが、こんなにもきちんとした質問をしてくださったのは初めてかもしれない」と褒められたから。

工場見学の後、お昼ごはんを一緒に食べて、夕方まで簡単な作業を一緒にして、雑談もする間柄になってから、そんな話になった。「実は以前は某社の製造部門にいまして、工場見学では案内する役も多くて…」なんて種明かしをしたら「本当は興味が無い人達や基礎知識が無い人達に『何か質問がありますか』なんて聞く必要無いんですよねハハハ」と盛り上がってしまった*1

彼らが言うには、空虚かつ誰も幸せにならない質問をするのは決まって「若くてやる気に溢れる営業職」とのこと。年配の人は教養があるから他分野他業種でも配慮できる。
営業職で教養が無いと、相手を喜ばそうとして盛大にスベる。
思い返してみれば自分でも思い当たる節がある。
なぜだろう、普段は相手を尊重し何かしらの(利益に繋がる)着地点を目指す、もっと言うとそれを仕事とする人達なのに、工場見学後の質疑応答タイムでは失敗する。

 

僕の経験から言うと「お医者さんの団体」は色々と酷かった。あれほど「見学にあたっての注意点」を守れない集団はいない。それでいて穏やかというか、きちんと紳士的な空気を漂わせている。でも、機械の隙間に(持ち込み禁止の)ボールペンを突っ込もうとするし、気になるボタンを押してしまう。クリーンルームでマスクを取ろうとした人さえいた。たぶん医学部では衛生管理について学ばないのだろう。
酷さでいえば「教職員組合」が次点。詳細は割愛。
つまりセンセイは工場見学に向いていない、と勝手に結論付けている。これはつまり偏見である。政治家は案内したことがない*2

 

大接近! 工場見学 (3) ガンプラの工場〈プラモデル〉

大接近! 工場見学 (3) ガンプラの工場〈プラモデル〉

 

 

もう今の僕は、工場見学を案内する側ではない。
転職して、見学させてもらう側になった。
今日はなんとなく昔のことを思い出しながら、「過去の経験があるからこそ存分に楽しめているのだろうなあ」なんて考えて、その整理整頓された工場を見学させてもらった。

https://www.instagram.com/p/BkUxULFhmHa/

 

楽しい出張でした。
ここまで色々と書いたが、自分のした「質問」は書かない。守秘義務&本人特定回避が理由。
ところで合流した取引先の人が分けてくれた(工場側への)お土産が、大学生の頃によく買っていたお店の饅頭だった。思いがけず懐かしい品に出会えた。そのお店のある隣町に住んでいる、とのこと。日本は狭く、世間はさらに狭い。

 

映像研には手を出すな! 3 (ビッグコミックス)

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*1:いわゆる「ぶっちゃけすぎ」な人ではあった。でも楽しい人でした。

*2:他県からの視察ツアーで訪れ「見学用の服に着替えたくない」と社員食堂で時間を潰していた市会議員さん達は、問題外だと思う。