世界を拡げる方法のひとつに、「自分の外に規範を求める」という手法がある。
自分の都合や意思をあえて廃したルールを決めて、それはもうルールの為のルールとして運用してみると、いつの間にか上手く行くものなのだ。どうせ他の可能性はわからない。結果論じみた御都合主義として、手軽なやり方だと思っている。
例えば僕には、こんなルールがある。*1
[書籍]
奨められた本は必ず読む。読めなくてもとりあえず買っておく。
新しい職場の社長は忙しい人で、僕も実際に合う事は滅多にないのだけれど、会えば必ず読書を奨める。仕事に関係する本ならば経費で買って全員で読むように、と伝えてくるし、そうでなくともこの人の奨める本は(今のところ)間違いが無い。さすが1年に200冊以上読む人は違う。どう間違っても心酔する相手ではないけれど、本の選択眼は信頼している。それになにより、僕が普段は読まないような本を薦めてくるのだ。
[服]
ファストファッションの服は、フード無しを選ぶ。
これは簡単に言うとユニクロ対策。安い服、どうしてあんなにフード付きばかりなのか。フード無しという制限は、出費を抑える制御弁になっている。
[映画]
気になる映画は万難を排して鑑賞する。できれば映画館で。
昨年の一時期は、映画の量に着目していた。それこそ休日に予定が無ければ興味が無い作品でも観る、くらいの方針で映画に接してみたのだ。
もちろん合わない映画も多かった。しかし“映画というジャンルそのもの”を楽しむ素地がたった数ヶ月で出来上がったのは個人的な収穫だった。ただしとても忙しい。休日が映画中心になってしまう。
今は「奨められたら、必ず観る」くらいのルールになっている。もちろん自分が観たい映画もあるから、この程度でも「趣味は映画です」と言えるくらいの量は楽しめる。
そして、誰かに勧められて行く映画というのは、面白さや感動の質が、とても新鮮なのだ。
今日はその「奨められた映画」について書く。
年若き友人に「リズと青い鳥」というアニメ映画を薦められたのは今月の初旬だったか。ライトノベル原作でその中のサイドストーリー的なエピソードを描く、メインの話はTVアニメと劇場版で映像化されている、そして「めっちゃ感動する」「t_kaさんもきっとめっちゃ感動する」とのこと。
とりあえず電子書籍版のライトノベル1巻を買って(便利)、夜に少しずつ読んでみた。爽やかで透明感のある青春ストーリーという趣き。なるほど推薦する友人が好みそうだ。
それから予告編を観て、公式Webサイトの「登場人物紹介」だけ読んで、映画館に赴いた。それが今日。どうやら地元では公開日だったようだ。
とても素敵な映画だった。
ややフェティッシュともいえるくらいに足とスカートで“演出”している。顔をあえて画面外に出してキャラクターが演技をするところもなんだか珍しい。
現実と絵本、2つの物語が対比する、というありきたりな構成なのに、片方がリアルで片方はあくまで作り話、そんな冷静なつくりがちょっと新鮮。
大切に想う、まるで半身のように寄り添い続けたい間柄であるが故に解ってしまう自分達の限界。何しろ高校生で余裕が無いので、離れるかどうかというシリアスな(大人から見ると視野が狭い)方向にしか考えられない主人公達。そんな2人が、大切に想うが故に繋いだ手を離すようになる。彼女達達の選択は、多くの人が共感できるのではないだろうか。
「物語はハッピーエンドが良いよね」と語る主人公だが、世界にはエンディングなんて訪れない。少なくとも青春まっただ中の高校生には、「物語」の先へ進まざるを得ないのだ。大人だから言える、「あ、成長したな」という瞬間。そんな事がどうでもいい時代、それが青春といえるのかもしれない。
だれも知らない小さな国―コロボックル物語 1 (講談社青い鳥文庫 18-1)
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当たり前だが、これは高校生のオーケストラ部だからこそ、そしてあの綺麗な絵柄だからこその感動だろう。韓国の刑事映画でも似たような「葛藤の後、繋いだ手を離す」作品を観た記憶があるけれど、ここまで爽やかな感動は無かった。あれはおっさんとおっさんの話だったので。題名は忘れた。
惜しむらくは情報不足。もう少し情報を仕入れて映画館に行けば良かった。完全に僕の問題。
とはいえ、本編の主人公格の何人かは登場するものの、知らなくとも映画は楽しめると思う。キャラクターの立ち位置ははっきりしていて、例えば部長と副部長(?)は「過去に何かあったものの、今は大切な仲間」みたいな間柄、みたいな感じですんなり伝わってくる。この辺りはアニメ映画ならではのわかりやすさだと思う。
細かい仕草や描写に凝っていて、まるで小説を読んでいるような映画だった。うん、良かった。おすすめです。めっちゃ感動する、以上の余韻があります。
映画『リズと青い鳥』オリジナルサウンドトラック「girls,dance,staircase」
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さてそんな映画の後は、静岡市清水区のベトナム料理店「タンフン」でお昼を食べてきた。
清水区に行く時は、チャンスがあったらタンフンに寄りたい、それくらいにお気に入りのお店。
今日は「バインセオ」のランチセットを注文した。
それから単品で「鶏肉のサラダ」も。キュウリのサラダが抜群に美味しいのだけれど、量がしっかりあるため1人のときは鶏肉のサラダ。安いし。
バインセオのセットには、生春巻きが1本(大きい)とチェーが付いてくる。バインセオ自体でお腹いっぱいになるから、鶏肉のサラダで完全に満腹だった。
バインセオ、薄いお好み焼きっぽい何か。ココナツオイルみたいな香りがする。豚肉、海老、モヤシ、鶏肉が挟まっていて、店員さんの説明通りに「切って、レタスに巻いて、浸けて、食べる」。例のスイートチリソースっぽい甘酢がとてもよく合う。
ベトナム旅行中にも食べたし、日本でも何度も食べているバインセオ。このお店のものがいちばん美味しい。ただし、どこがどう良いのか、上手く説明できない。
食後のチェーは、白花豆とカボチャとココナツとタピオカパールが入っていて、これも良い感じ。お腹に余裕があったら、セットではなくてチェーは単品でたっぷり食べたい。
そんな土曜日。
今から寝ます。オーケストラやバンドの映画を観た夜は、頭に劇中の音楽が流れてなかなか眠れないのは僕だけだろうか。
では、おやすみなさい。
*1:もちろん守れないことも、守らないことも多い。平均して8割程度はルールを適用、といった感じか。