肉蕎麦

静岡市の北街道沿いに「水曜文庫」という素敵な古本屋がある。
品揃えが楽しい書店。入り口から入ってすぐの辺りは、絵本や料理や旅行といった、軽い気分でも楽しめる本がたっぷり並んでいる。ここだけでも楽しいのだが、店の奥のほうには、平和運動や政治活動、アングラな本など、かなり「読むのなら本腰を入れて」という感じの書籍が詰まっている。硬軟取り混ぜた具合が絶妙なお店だ。

 

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その「水曜文庫」の2階に、新しいお蕎麦屋さんができていた。
いわゆる「肉蕎麦」のお店。
東京など都会では何度か遭遇している。いつか食べたいと思っていたから、これ幸いと今日のお昼ごはんに食べてみた。

もとより肉類と蕎麦は相性が良い。
蕎麦というと、鄙びて控えめでさっぱりした食べ物という印象があるものの、逆に脂の濃い味でも蕎麦の風味には合うものなのだ。でも、鴨南蛮や鶏南蛮くらいしか、普通のお蕎麦屋さんでは見かけない。*1

肉蕎麦は、その“こってり”系の蕎麦の新顔といえる。

今日行った「活富士ビストロ肉そば」は、その肉蕎麦が看板メニューのお店。豚肉を活かした蕎麦という、静岡では珍しいお店。

 

 

なにやら特別な豚肉を使っている様子。店のあちこちにその説明書きがある。壁にも書いてあるし、テーブルにもラミネートされたA4の手作り説明用紙が置いてある。いくつかの品種を掛け合わせた、肉質食味とも優れた豚ということなのだと思う。僕はわりと面白く読んでしまうけれど、こういう表示が煩く感じる人も多い気がする。ご飯を食べる時間に、農協の会合で配られるような手作り印刷物(ネットからの図表と、資料のスキャン画像と、Wordの素人文書の合わせ技)を読んでも美味しさが向上するわけではない。
「富士山麓の生産者が丹精した、他では食べることのできない良質な豚肉」で十分ではないか。後はメニューの後半に読み物としてページを割けばいい。

ともあれその肉蕎麦は、さすがに美味しかった。
大きな豚バラ肉の角煮っぽいものと、ひらひらっとした薄切り肉、それぞれたっぷり入っている。大きなレンゲには肉味噌も盛られていた。
個人的な好みで言えば、肉味噌に人参などが入っているのはどうも嬉しくない。これは東京で見かけた、あるいはネットの記事で読んだ「肉蕎麦」が、かなりこってりしてしょっぱい、ジャンクな食べ物だったから、という先入観が大きく影響している。野菜の甘さは、かけそばの汁に合わない気もするし。
ただしこの肉味噌も、テーブルの七味を振るだけで文句なく美味しくなる。優しい味わいならそのまま、がつんと楽しむのならば七味、と工夫できるのは素晴らしい。

このように肉類で3種類も入っているから、食べ進むルートも様々で、それもまた良い感じ。甘めの味つけが、蕎麦の風味ともよく合っていた。

次に食べるとしたら、角煮を追加したい。そういう注文もできる(食券機にボタンがあった)。

肉っぽい麺類を食べたいが、脂こてこてのマニアっぽいラーメン屋という気分でもないし、カフェのパスタも違う気がする。そんな時に丁度良いバランスの肉蕎麦だった。以外と替えが利かない立ち位置の麺かもしれない。

ところでなんでこんな店名なのだろう。
「活富士ビストロ肉そば」
マイナス要素は皆無だが、不思議な組み合わせの言葉になっている。古本屋の2階という立地も含めて、穏やかだが完全に日常というわけではない、そんな昼食だった。

 

 

 

 

 

*1:カレー蕎麦は、またちょっと違う気がする。天ぷら蕎麦は、実はかなり油が味わえる料理だと思う。

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