苦手な買い物と、リンゴのクランブルタルト。

 

 

 

 

新しい仕事に就いて2週目の来週、遠方への出張が予定されている。
本社というのか出資元というのか、まあそこの偉い人と会ってくるだけなのだが、とにかく冬用のスーツを買う必要が生じている。

手持ちのスーツ(背広)は、ちょっと型が古いものと、いかにも就職活動用のものと、礼服しか無い。礼服はともかく、他のものは夏期対応のつくりであり、寒い時期の泊まりがけ出張には対応できそうにない。
それでなくとも、流行遅れの雑に選んだスーツというものは、特に着慣れていない場合には、なんだか変な感じに見えるものだ。
就職活動ならばその“ちぐはぐさ”も許されるかもしれないけれど(だいたい経歴と対応しているからある意味自然だ。この人はスーツを毎日着ていないから…と合点がいく)やはりここはきちんとしたものを買い揃えるべきだろう。

 

太陽と乙女

太陽と乙女

 

 

 

というわけで、今日はスーツを2着、買うために外出した。

まずは古いテーラーへ。
ここはいわゆる「祖父の代からお世話になっている」お店で、特に父はここで作ったものが多い。たしか父の勤め先の特約店だったはずだ。
礼服や、それから大学を卒業する時にこの店でスーツを誂えた。それからは疎遠になっていたが、この前まだお店が存続していて、価格もそれほど高くは無いことを知って、今回はお願いすることにしたのだった。

僕はいわゆる「紳士服のお店」が苦手で、デパートでもそういう売り場のあるフロアは長く滞在できない。床の色が違っていて、そのエリアに侵入した途端に店員が寄ってくるところは恐怖すら覚える。婦人服売り場を素知らぬ顔で通り抜けるほうが、まだ気が楽だ。

でもこの古くて狭いテーラーは、そういう居心地の悪さは感じない。1対1というのもあるし、余計な会話がまるでないのも気安い。目的や使用頻度を聞かれ(出張は時々あるが、毎日の通勤では着ないです)、好きな色を決めて、後は「今ふうのスタイルにしましょう」と決定すれば終わり。
ただし作るのに時間がかかる。のんびり作るから良い生地でも安く作れる、というあまり一般的とはいえない理屈でこの店は回っているのだ。今回の出張には間に合わない。

 

内田百間―イヤダカラ、イヤダの流儀 (別冊太陽)

内田百間―イヤダカラ、イヤダの流儀 (別冊太陽)

 

 

 

出張に間に合わせるために、普段使いにもう1着、これはチェーン店の紳士服店で買うことにした。先のテーラーのご主人も、それがよろしいと勧めてくれた。「激安品を選ばなければ、仕事着としては良いものが手に入る」とのこと。

幹線道路沿いの紳士服店へ行く。
常に閉店セールを実施中の印象があるけれど、今日から来週までは「本当に実質的にお店を空にする、本物の閉店」とそれに伴うセールを行っている、という説明文が貼られていた。その閉店からしばらくしたら、改装の後、また開店するという。
なんだかよくわからない。紳士服店の閉店セールというのは、もしかしたらスーパーが18時以降にお惣菜に半額シールを貼るようなものなのかもしれない。原理的には、紳士服店であれスーパーマーケットであれ、毎日、閉店する*1
ともあれセールというのは有難い。実際、ずらっと半額になっていたり、セット売りやらキャンペーンやらで、とにかく安く買えるような雰囲気はある。
しかし広い店内を歩いているだけで、よくわからなくなってくる。「よくわかりません。色はこれくらいのグレー。サイズは測ってください。あんまり安いのは困る」とだけ伝えたら、お店の人が何着か並べてくれて、あれが半額これは値引きと説明してくれた。
どんな買い方をしてもきっと予算超過はしない。だからもう、値札は見ないでえいやっと選んだ。

ファストフード店でサイドメニューを勧めるみたいに、ワイシャツやコートも見せてくれる。そういえば軽いコートを持っていなかった、と思い出して(真冬用のものや、カジュアルものはあるが、スーツと合わせるとちょっと重い)シンプルなものを1つ買う。ワイシャツも買った。コートは「スーツを買って、お店のアプリを入れた人だけの特典」で、4分の1くらいの価格になってしまった。ユニクロより安い。

 

アルネカレンダー2018 ([カレンダー])

アルネカレンダー2018 ([カレンダー])

 
大人のおしゃれ16 秋と冬'17

大人のおしゃれ16 秋と冬'17

 

 

ともあれこうして、苦手な買い物が終わった。
Tシャツ1枚でも、買う時は悩むし、労力は惜しまないし、きちんと楽しめる。服を買うのは好きなほうだ*2。しかしスーツは基本的に興味が湧かない。自身の見識というものがほとんど持てないから、その時に妥当だと(ぼんやり)考えた価格帯より少し上のものをとりあえず選んで、今まで済ませてきた。

もう21世紀なのだから、ネクタイはゴムとホックでつけるタイプに切り替えて然るべきだと僕は考える。どうしてあんなに面倒な結び方をしなくてはならないのか。
未だに鏡を見ながら四苦八苦している。
今日はネクタイの結び方ハンドブックを貰ったが、僕の求めるものは結び方の知識ではない。バック・トゥ・ザ・フューチャーに出てきたスニーカーみたいに、ボタン1つで締まるネクタイが欲しい。

 

 

 

 

 


そういう疲れる買い物をしたので、自分を甘やかすために甘いものを食べた。「Pappus」の、リンゴのクランブルタルト。
お店に行った時、ショーケースにはほとんどケーキが残っていなかった。次に並べるもの、として提案されたのがこのタルト。
この、焼きたてで、ようやく冷めた程度のものが、これはこれでとても美味しかったのだ。さくさくのクランブルと、ほのかに温かいりんごの部分、まだかちかちになっていないタルト台。時間を置いてしっとりしたものとは違う、貴重な一瞬を楽しむことができた。

 

 

さて、お風呂に入って、寝ます。
昨晩はうっかり電子書籍を大量購入してしまった。「宝石の国」がとても面白かった。物語のターニングポイントだけで1冊が終わってしまって、次が待ち遠しい。 

宝石の国(8) (アフタヌーンKC)

宝石の国(8) (アフタヌーンKC)

 

お題「好きな作家」

お題「今日の出来事」

 

 

*1:そういえば、昨年「GAP」で定価の買い物をしたら、職場の人達にとても驚かれた。あそこはセール品を買う店だと言われた。

*2:もっと好きなのが、他人の買い物に付き合うこと。同性でも異性でも楽しい

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