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車を隠し撮りする人達

友人の家、いや家というか小屋に行ってきた。
元は町工場の倉庫だった場所。売るに売れない事情があるらしく、親戚から引き継いだ友人が、趣味の小屋として使っている。電気は引いてあるし、トイレもいちおう生きている。でも水栓を締めているから、隣のショッピングモールを借用することが多い。
友人と周囲の人達(僕も含む)が電気工具やガラクタを置いていき、いつしか共用の工作室となってしまった。出入りするメンバーの何人かが片付けや棚作りを楽しむタイプであり(僕もそうかもしれない)それなりに整理整頓が行き届いている。
倉庫とはいえ完全に無人だとあっという間に荒れるから、バイクのレストアでもサーフボードのメンテナンスでも、とにかく誰かが活用するだけでも喜ばれている、とのこと。だから今のところ家賃は無し。電気代の足しにと、飲み物や食べ物を差し入れする程度の、雑な共用状態で数年間使わせてもらっている。

その敷地に、近くの工場の人達がカメラを据えることになった。
一部上場企業の製造部門だから、きちんと土地への出入りから目的まで書面付きの説明があった様子。
曰く、朝夕の通勤時に、マナーの悪い従業員が目立つ。安全活動の一環として、各所で隠し撮りをして、当社のマナー違反者をピックアップしたい。つきましてはこの一時停止線が見える敷地に、夕方だけ入らせてもらえないだろうか、とその事業所の安全衛生管理部門担当者から。

なるほど確かに、こう言ってはなんだけれど、ガラの悪い「現場のおにいちゃん」達が、駐車場からがんがん飛ばして交差点に突っ込んでくる。たぶんこの隠し撮り活動を言い渡されているのだろう、急ブレーキで止まるか、あるいは曖昧に減速して、またスピードを出して去っていく。

抑止力、という狙いは理解する。でも共感しない。
なにしろ隠し撮りである。公道を、つまり従業員以外の車や歩行者も撮るのだ。その辺りの配慮とか考慮はしたのだろうか。

僕が昔勤めていたところでも、この種の「交通安全のための隠し撮り」が企画されたことがある。
そもそも通勤時間は勤務時間ではないこと、つまり労災保険が適用されるのは、労働に必ず付随する時間帯だからであり、私的時間への干渉は交通安全の取り組みとして正しいのか否か、はずいぶん話し合った記憶がある。周辺住民の理解も必要、撮れた画像と本人との紐付けが正確にできるのか、といった問題もあった。

何よりも大きな問題として、一時停止違反の車を撮影できたとして、それは警察に報告すべき事柄なのか、それとも社内の問題として扱うに留めるべきか、まで考えて、どうにも判断ができなくなってしまったのだった。法務部に相談するよりも、他の案を考えたほうが賢明である、という判断になったのだった(そして、朝から旗を持って歩道に並んだ。無意味だ)。

で、今日はその「隠し撮り班」の人達と話す機会があったため、その「もし一時停止違反の同僚がいたら、警察に連絡するのか」を聞いてみた。
そんな事は考えた事が無かった、とか、いやこれは社内の取り組みだから、とぼんやり否定する言葉しか聞けなかった。
警察への協力は市民の義務だが、会社の交通安全活動はその例外らしい。

会社にしろ役所にしろ、こういう「とりくみ」に関しては、ずいぶん考えが足りないなあ、と思えるものが多い。企画段階で、既定路線が引かれているのだと推測する。手段が目的になっている。

生真面目な事を言わせてもらうと、この「隠し撮り班」的な考えの浅さは、要は安全に対する真剣さが足りないのだと思う。誰も、正当に成果を挙げる、なんて風には考えないのだろう。リソースの無駄遣いが直接は怪我や事故に繋がらないからこその、緩さである。じゃあ止めておこう、と提言するよりも楽なのだ、無駄遣いや思考停止のほうが。

僕の個人的見解としては、ひとりひとりが経営者視点なんてものを身につける前に、安全活動の本質や労働安全衛生法の意義を考えたほうが、仕事の無駄は減るんじゃないか、と思っているのだが、どうだろう。

 

 

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ああそうだ、まるで関係無いのだが、この写真集・画集が欲しくてたまらない。

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ちと高いが、買う価値がある。買わねば。
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Les Machines de L'ile, Nantes, France


Les machines de l'Ile @ Nantes : Le réveil de Kumo