ハルキストに会える場所

今日は数年に一度の、TVニュースで「ハルキスト」が観測できる日。つまり村上春樹氏の長編小説の発売日。

といっても、僕はこのハルキストという存在に遭遇したことがない。
どこか揶揄を含んだ言い方なのだとはわかる。どのような揶揄なのかも想像できる。でも書かない。

僕は村上春樹氏の小説が好きだ。大好き、といってもいい。読めば読むだけ、何かしらの楽しみがある。
ただし新刊を発売日に買う、という類のファン行動はしない。どうせベストセラーなのだから、慌てて買う必要も無い。それよりは、少し過去の作品を読んで、頭を切り換えてからおもむろに読みたい。
読めば数日間はかかりっきりになることも、慌てて買わない理由のひとつ。品質に対する信頼の、ひとつのかたちだと自負している。

 

しかしニュースに出てきたハルキストの人達は、やっぱり僕の感覚とは馴染まない。
できるだけ早く読みたいから、0時に都心の書店に並ぶ。それはまあ(僕は絶対にやらないけれど)気持ちはわかる。
でも本を買う時にカメラに向かってピースサインはしたくないし、何より購入後に店内に設えられた長机で、朝まで新刊を読むなんて嫌だ。都会なのだから、もっと落ち着いて読める場所はいくらでもあるだろうに。なんで公民館にあるような長机で、せっかくの本を読まなければならないのだ。その合間にインタビューまで受けて、なんだか嬉しそうなのも変だと思う。
そういうのは村上春樹の小説的ではないよね、と思ってしまう。

たぶんAppleの新製品を並んで買う、ディズニーランドの新しいアトラクションは初日に乗る、そんなタイプの遊び方をしている人達が、TV的に面白いから取り上げられるのだと思う。
あるいは、ただファンの数が多く、だから少数派でさえある程度の規模になり、話題になるだけなのかもしれない。

 

村上春樹 翻訳(ほとんど)全仕事

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なぜこんなことを書いたのか。
それは職場で、村上春樹の小説を読む、と言ったところ、にこーっと笑いながら、「ハルキストでしょ!!」と言われてしまったのだ。いつも軽率な物言いをする人だが、しかしなんだか口調からして失礼で、もやっと嫌な気分になったのだ。
今の時代に、にこーっと笑いながら「右翼だよねっ!!」と言ったら、それはマイナスの意味合いが含まれているだろう。そういう感じ。
それに、そんな流行り言葉というか誰かが作った定型表現みたいなレッテル貼りをしたら、その後の話ができない。
小説家の話題になったら、やはり本と物語の話に続けたい。でなければ、天気かプレミアムフライデーの話題でいいじゃないか、と思う。

 

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