緋鯉のドレスとレギュラーガソリン。そしてアメリカンチェリーのタルト。

お隣のお婆さんは、藍染め民芸風アレンジ洋裁(和風の端布や古布を使う)では「地方の名士」くらいの地位にある、という。個展というか、自宅を開放して展示会をしているし、その作品はかなりの高値で売られている。実際、ずいぶん手をかけた品に見えるし、使っている布も高価なものばかり。端切れ高騰の頃は、ずいぶん儲けたらしい。

最近、かなり作風が先鋭化してきた。
今日は「鯉のぼりを使った、ボディコンシャスなドレス」が完成したという。帰宅した時に、ちょうどお婆さんに声をかけられて、「カメラの使い方がわからん。ちょっと撮ってみてくれ」と、一眼レフでモデル(派手なおばさん)を撮ることになったのだ。
椎名林檎なら似合うかもしれない、というのが正直な感想。
でも良いカメラだった。新しいPen、年寄りがわけもわからず買うのは勿体ない。

そのお婆さん、古い着物にハサミを入れる時は、奇声というか気勢というか、とにかく大きな声を出す。先日は雨の晩に叫びながら泣いていたので(怖かった)、たぶんあの時に、古い鯉のぼりを切り刻んでいたのだと推測している。できれば切りたくはない、らしい。でも夜中に、えいえい、うぉーうぉー、ごめんねーごめんねー、って叫ぶのは止めて欲しい。クールさが足りない気がする。

 

ほとんど関係無いけれど、今日はその帰宅前に、ガソリンを入れた。
いわゆるセルフ給油の店。
それなりに尿意が逼迫していた状態での給油開始となった。わりと我慢してしまう側の人間なのだ。
ふと見ると、隣のレーンで給油している女性に抱きかかえられた赤子(1歳くらいか?)もまた、何かを我慢している顔をしていた。おお同志、と親近感を抱く。赤子はそのうち、何か難しい、哲学的と言ってもいいような顔になり、そしてふっと遠くを見るような目になった。ああ解放されたのだな、良かったな、と思ったあたりで給油が終わったので、その後はわからない。泣き声が聞こえてきたから、たぶん気持ちが悪くなったのだろう。赤子というのは、後先を考えないものなのだ。

僕はさすがに、給油中に解放されない。頑張って帰宅してから、しかるべき場所で目的を達成した。

だから、車庫で呼び止められて、隣の家に連れて行かれて、お婆さんとおばさん(派手)にカメラを渡された時は、かなり危機的状況だった。
小学生の頃にはずいぶんお世話になった人。だからいまだに「ちゃん」付けで呼ばれてしまう。だからといって、彼女のアトリエを汚すわけにはいかない。そう、僕はもう、大人なのだから。

 

盤上の夜 (創元SF文庫)

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ヨハネスブルグの天使たち (ハヤカワ文庫JA)

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 あ、書き忘れた。

藤枝市の「ボクゥボクゥ」で、チェリーのタルトを食べた。
アメリカンチェリーなのに、フランス菓子っぽくて素敵。コーヒー向けの味、だと思う。素晴らしかった。

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