映画『スポットライト 世紀のスクープ』と、『ルーシー・リーのチョコレートケーキ』。

映画館に行ってきた。
今日の作品は、『スポットライト 世紀のスクープ』。



例によって、映画レビューのSNS、「Filmarks」に載せた文章をそのまま転載する。推敲も読み返しすらもしていないけれど、書いていたら面倒になったので、そのまま貼り付けてしまう。

ここ数年間の「事実を元にした映画」のなかでは一番かもしれない。静かな興奮の余韻が、今も残っている。
真面目一辺倒ではなく、小気味良い台詞や美しい映像、群像劇が素晴らしい作品でもあった。

 

ボストンで実際にあった、聖職者の大スキャンダル。その隠された性的虐待が公になった後は、世界中のカトリックに飛び火した。その大騒ぎは、日本でもずいぶん話題になったと記憶している。

しかしボストンである。アメリカの古き良き街。洗練と伝統を誇る大都市だ。こう言ってはなんだけれど、南部の片田舎とは違う。でも、そんな街で、この「胸くそ悪い話」は、数十年と続いていた。

 

大多数を満足させる社会というのは、生物に似ているという。毒すらも社会の維持や存続に組み込んでしまうシステム、誰が指図した訳でもない緩衝系。
街の抱える闇を誰かが叫ぶ。それをすくい上げる仕事の人もいる。何年もそうやって戦ってきた。
街の外から来た人間はその闇を明らかにしようと試みる。
もちろん、その社会に育った善良で純粋で熱意に溢れる人達だって、全力で社会を変えようとする。被害者や研究者や弁護士、そして新聞社の特命チームが、それだ。
しかしそういう個々の動きは、あっという間に、正しく生きる常識的な人達の総意に飲み込まれてしまう。有形無形の圧力や妨害だけではない、スクープ記事になった程度では、鎮火してしまう。「なるほどけしからん。では次のニュース…」というやつだ。
かくして街は平穏に、しかし少数の、隠れた悲しみや苦しみは澱のように溜まっていく。

本作の終盤では、決定的なスクープをものにした記者が、血気盛んにそれを公表しようとする。新聞記者ならば当たり前の正義だ。しかしベテランやリーダーがそれを押しとどめ、さらに大きな、社会そのものを変える一手を待つ。その決断が無ければ、スクープは単なるガス抜きになっていた。
優れたシステムを変えるには、熱意や純粋さだけでは足りない。繰り返しになるが、大多数の総意が駆動するシステムに組み込まれるだけで終わってしまう。それが概ね社会正義となるのだから、正しさというのは厄介なのだ。
知恵、絡め手、そして後悔に後押しされた逸脱。あらゆるものを総動員して、ようやく得た大きな一歩、それが本作のスクープ。ため息が出る。

しかし翻って、僕達の日常はどうなのだろう。
「自分達の常識」を正しさの担保にしている人がどれだけ多いか。彼らの「非常識」への厳しさは、社会の闇といえないだろうか。感情と納得と状況の奴隷になってはいないか。「ここはそういう場所だから」「昔からそうやって上手く回してきたのだから」と、信じ、信じ込まされていないか。最善を正義と思い込む愚を犯していないか。
苦い自省があるからこそ、この映画の「スポットライト・チーム」は、とても眩しい。


物語終盤、隣の席の人も、その隣の人も、背もたれから身体を浮かせて、前のめりになってスクリーンを見ていた。ふと見ると、周囲の皆がそんな風に集中している。たぶん、僕だってそうだっただろう。戦闘や命のやりとりが描かれていなくとも、映画にここまで夢中になれた。良い経験でした。

 引用終わり。素晴らしい映画だった。
台詞の繋がりとシーンの転換が、なんとなく「ゆうきまさみ」氏の漫画を思わせる。気になる人はぜひ観てください。おすすめです。

 

 

 

 

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おやつはアイスティーと、ルーシー・リーのチョコレートケーキ。

これは駅前の「静岡市美術館」で開催中の巡回展にあわせた、美術館から徒歩数分のティールーム「MARIATHANK」のメニュー。
見た目がルーシー・リーなのはもちろん、味もとびきり素晴らしい。
クルミがしっかり効いたビターなチョコレートケーキには、干しアンズの酸味が。添えられたクリームやレモンカードも面白い効果を生んでいる。かわいいクッキーも、きちんと美味しい。チョコレートケーキなのにクルミが“効いている”なんて、珍しい。
展覧会の雰囲気にぴったり合った、素敵なケーキだった。

MARIA THANK
営業時間 Open11:00~Close19:00(19:30ラストオーダー)
定休日:月曜日・火曜日(月曜のみ祝日は営業)
HP:http://mariathank.com/

住所〒420-0852 静岡市葵区紺屋町8-3 モガミビル 3階 (おぐし神社前)
TEL:054-273-8778 FAX:054-273-8778

 

 

紅茶をめぐる静岡さんぽ (momo book)

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