映画『オデッセイ』または「火星の人」あるいは「The Martian」。

映画『オデッセイ』を観た。
原作小説は、昨年の個人的No.1(翻訳部門)。繰り返し読んで、公開日を待ち望んでいた。

ここまで好きだと、映像化された時の落差が怖い。でも、もちろん観た。

 

 

結果から書くと、とてもとても素晴らしかった。今のところ、ほとんど瑕疵を見つけられない。大作ハリウッド映画のなかでは、人生に残る1作となるかもしれない。

小説の映画化だから、もちろん端折った部分や、削った場面は多い。
エピソードの3分の2くらいは消えた、あるいは改編されている印象。しかしその切り取り方が「原作好きでも納得」なので、これは脚本と監督の勝利だろう。
火星に1人で残された宇宙飛行士が奮闘して地球帰還を目指す話だから、とにかく災難とトラブルの繰り返しである。そのトラブルのうち、ことさら大きな2種類の事件は映画では割愛して、全体としてはあっさりした雰囲気。でも脂汗でどろどろの主人公が根性と愛と才能でトラブルを乗り越えていく、という映画ではないから、これで大正解。

がっちりとお金と技術を注ぎ込んだ映画。映像も安心して楽しめる。この辺りは小説を読みながら想像した風景を補完することもできたから、映画化万歳である。
今日はうっかり、3D上映で鑑賞。別に2Dでも良かったが、まあ豪華な3D映像も悪くない。ついでに言うと、うっかり吹き替え版の上映でもあったので、これは僕としては20年ぶりくらいの吹き替え洋画体験だった。やはり字幕のほうが好きだと再確認できたが、でも海外ドラマみたいで吹き替えも楽しかった。軽妙なやりとりが続くので、これはこれで良いものだ。

それからダクトテープはやはり良い。たぶん今日は、東急ハンズでダクトテープが普段より売れたのではないか。
なぜか宇宙、火星ではディスコミュージックが似合う。これもこの映画ですり込まれてしまった妙な認識。
原作者がインタビューで言っていた。
「科学がプロットを作る。偶然の不幸を作者が用意する必要は無かった」
それでも世界は過酷で、でも人はクールに優しいのだ。

 

そんな感じで、100点満点で120点をあげたい映画。
たぶんあと1回以上は、映画館で観る。
でもひとつ、残念なところがあった。

それは日本での宣伝のやり方。
宇宙兄弟とのコラボレーション企画」は、勘弁して欲しい。だって宇宙兄弟の登場人物が、「オデッセイ」の主人公の「帰還を待っている」わけが無いではないか。世界観というものを、もう少し大切にして欲しい。
映画のフライヤーも、ちょっと酷い。キャッチコピーから解説まで、「原作も読んでいないし、映画だって観ていない人が想像で書いた文章」みたいなのだ。なにが「スーパーポジティブな主人公」が「奇跡を成し遂げる」だ。劇中で繰り返し描かれ、そして最後には主人公が語るように、ポジティブとかネガティブではなく、ただひたすら問題解決に対して考え、計算し、試す、それがこの主人公なのに。
フライヤーには彼の置かれた過酷な条件も列記されている。がしかし、これもちょっと正確ではない。とにかく、ちょっとずつ、ズレているのだ。

 

そういえば、映画鑑賞の後にトイレで「最近ハリウッド映画の中国への媚びがすごいねー。リドリー・スコット作品でもチャイナマネーが欲しいのかね」と批判していた人達がいた。
この映画に限っては、中国が登場するのはほぼ必然だろう。アメリカに次いで宇宙開発、特に地球圏以遠にロケットを飛ばせる国といえば、まずは中国が「リアル」だ。きちんと駆け引きがあって、ラストシーンではその中国側の成果も描かれていて、それなりにフェアな扱いだと思う。原作小説よりは説明不足だが、これは批判する彼らの認識不足のほうが良くない。

火星の人

 

小説はこの表紙と、2冊に分かれた新版が発売中。内容は同じだから、マットデイモン氏が好きな人と、文庫本は薄めのほうが好きな人以外は、この赤い表紙のほうがおすすめ。
映画の題も、「火星の人」か「The Martian」が良いと思うのだけど。まあ、「ザ・マーシアン」って予告編でカタカナ英語で言われたら興醒めかもしれないが、ともかく原作小説はおすすめです。

 

火星の人〔新版〕(上) (ハヤカワ文庫SF)

火星の人〔新版〕(上) (ハヤカワ文庫SF)

 
火星の人

火星の人

 
火星の人〔新版〕(下) (ハヤカワ文庫SF)

火星の人〔新版〕(下) (ハヤカワ文庫SF)

 

 



さて、今日のおやつは、「MARIATHANK」の、フランクフルター・クランツと紅茶。
これは「オデッセイ」の登場人物、ドイツ人のフォーゲル氏に敬意を表してのドイツ菓子。バタークリームとジャムが美味しい。写真は撮り忘れた。