ブラウニーは大丈夫だから

「ニセ医学」に騙されないために   危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る!

職場の先輩が、ブラウニー(僕が持ってきた)を美味しそうに食べていた。
「あっチョコですよ」と声をかけたが、「大丈夫だよ」と気にしない。
この人、アトピーやアレルギーが酷くて、医者にチョコレートやサラダオイルを止められていると言っていたのに。

チョコレートが駄目なら、ブラウニーだって駄目そうなものなのに、それは気にしないらしい。

その「医者」に診断してもらったわけではなくて、テレビに出たり講演会を開いたり、書籍を出している有名なセンセイが、そう言っていたから信じたとのこと。
先輩自身は、医者は苦手で、信用していない。

 

代替医療や、妖しげな健康法にはまる人の、ひとつの類型といえる。
ものすごく端折って言うと、要は楽をしたいのだ。
病院は時間もかかるし、なんだか怖い感じがする。でもそこで考えるのを止めて、テレビや雑誌の健康法を選択したら、考えが浅い。コインの片面だけをちらっと見て、価値を決めてしまうようなもの。

多くのカジュアルな代替医療や健康法は、「楽」なのだ。
チョコレートを止める、サラダオイルを使わずオリーブオイルならOK(ちなみに菜種油もOK)。白砂糖は毒。スムージーの酵素は身体にとても良い。コーヒーなんてもってのほか。
ちょっと面倒だが、日常生活で取り入れるのが不可能ではない程度のルール。少なくとも、無理だから断念することも、続ける際の金銭や手間の負担も、頑張って医者に通い検査を受け服薬を続けるよりも容易い。あるいは気分的に容易い。
ではそうやって自分の気持ちに素直になって選んだ道が正解なのかは、これはもう数字によって証明するしか無い。
その辺りの厳密さについてならば、日本の保健医療制度というのは、なかなか頑張っている。なにしろ国や基金が一般市民へ金を(7割くらい)払うのだから、それはそれは厳密なのだ。
「薬によって殺される!」と叫ぶ前に、治験や審査制度を調べてみると良いと考えるのだが、どうか。
つまり、よく言われるように「そんなに素晴らしい効能があるのなら、役人と医者と政治家が寄ってたかって保健医療に組み込むよ」という事だ。

 

アトピー、そしてアレルギーには、僕も昔は悩まされた。
医者に通い、薬を試して、いつの間にか、ほぼ完治した。たまに肌が荒れたりするが、日常生活で支障は無い。
医者もわりといい加減な事を言う。完全に間違いではないけれど、治療法というには曖昧すぎる言葉も多かった。「刺激物の過剰摂取は避けよ」とか「夜更かしは駄目」とか。
しかし医者自身が「それらはまあ気休めである。とにかくアレルゲンとなる物は避け、薬は言われた通りに続け、アレルギーとアトピー以外の体調異常もなるべく避ければ、上手くいけば治る。治らない時もある。全員に通用する治療なんて無いから、診察が必要なのです」と言っていた。

結局、特効薬の無い分野なんて、その程度しか僕達にできる事は無いのだろう。
それでも幸せなほうだ。何もできることが無い、なんて状況よりずいぶんまし。
そのうち特効薬が見つかれば、今度は副作用に注意して、慎重に使えばいい。全体として生活の質は向上する。素晴らしい。

そういう側面から見ると、現代医療というのは、なかなか大したものである。
それを否定するのは、テレビがきちんと受信できて、車が走り、海の向こう側から石油が街まで届く、そういう社会を駆動する考え方の仕組みを否定することに、とても近い。残念だけど、僕達の心と気持ちよりも、科学的な考え方の積み重ねのほうが、健康への貢献には実績がある。

不安だから、嫌いだからといって、考えるのを止めてはいけないのだ。
少なくとも慢性病、毎日が不快になる病気ならば、冷静に付き合わなければいけない。「自分はそう思ったから!」で治るのなら苦労はしない。
「自分の身体は自分が一番知っている」は、錯覚だ。あるいは誰かが何かを売りたい時の、枕詞だ。

 

ちなみに先輩は、ブラウニーを3個食べて、特に問題なく定時で帰りました。
その1個は、僕が残業する時に「がんばりフード」にしようと密かに目論んでいたのだけれど。仕方が無いから、今日は1時間の残業で帰宅。本当は仕事が山積みだが、本日はもう気持ちが折れた。そういう日もある。しかしひとり1個の計算で持ってきたのに、3個食べることは無いじゃないか(ごく少人数の職場です)。実はチョコレート菓子、好物なのか?

 

 

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