ローストビーフ・オニオン・サンドイッチ

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島田市のサンドイッチ専門店、「ペアバルーン」に行く。
専門店自体が珍しいが、この店はずいぶん長く続いている。名店、と言っても間違いではないと思う。しかしそれほど有名とはいえないし、地元でも知らない人は全然知らない。
店は小さく、そしてわかりにくい場所にある。島田市役所から徒歩数分、しかしマップアプリやGPSが無いと、最初は戸惑うのではないか。そして店にたどり着いてからも、人によっては少し怯んでしまう、そういう「個人店」なのだ。
住宅地や裏通りにある個人経営の喫茶店に平気で入れる人なら大丈夫だけれど、そうでなければちょっと勇気が要るかもしれない。

とはいえ、入ってみると、普通の落ち着いた、こぢんまりした綺麗な店である。
変な主張の貼り紙もないし、“実家っぽい”ごみごみした生活用品もないし、観光地のお土産や飾り付けもない。

メニューは多い。
トーストしていないパン、トーストしたパン、そしてクラブハウスサンドイッチ、それぞれに適した具の組み合わせが並んでいる。でもパンと具材の組み合わせは、好きに相談できるみたいだ。

今日は「ローストビーフ・オニオン・サンドイッチ」を注文した。
これはトーストしたパンで作るタイプ。
レタスとキュウリとホワイトアスパラガスは標準装備。
僕はマヨネーズが苦手なので、「もし入っていたら抜いて欲しい」と注文をつけた。
すると店主は「アレルギー等では無いのならば、ぜひ当店の手作りマヨネーズを試して欲しい」と言う。面倒な人だな、とちょっと思ったのだけれど、しかしそこまで言うのならばと、チャレンジしてみることにした。

マヨネーズは「控えめ」にしてくれた。
そして供されたサンドイッチは、びっくりするくらいに美味しかった。
薄いマヨネーズは、確かに野菜に必要な味。
ローストビーフはたっぷりで、しかし「量で勝負の鬼盛り」ではなく、きちんと食べやすい量。
全体的に豪華で手が込んでいるのはわかる。手作りの良さ、が節度良く伝わってくる味と量。
以前、ホテルオークラだったか何処だったか、とにかく超高級なサンドイッチを食べる機会があって、あれも美味しかったけれど、この「ペアバルーン」のほうが、僕は好きだ。サンドイッチらしいカジュアルさで、でも抜群に美味しいのだから素晴らしい。

 

隣の席では「若い独身の叔父さんに連れられた、幼稚園児くらいの男の子」らしき2人連れがサンドイッチを食べていた。叔父はちょっと得意げに語り(どうだ旨いか叔父さんはたまーにここに来るんだペアバルーンで食べたらコンビニのはしばらく食べられないぞ…)、そして甥っ子はただ夢中で玉子サンドを食べて言葉も無い、という光景は、実に楽しいと思う。
独身の大人は、こういう自慢を親戚の子供達にしなければならない、と僕は思う。そして、この「ペアバルーン」は、その場所として最適なのだ。

 

 

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そんな素敵なサンドイッチ体験をした後に、幸せな気持ちで「コーヒーでも飲もうかな」と行った「Zeal」は、残念なことばかりだった。多くは語らないが、コーヒーは忘れられ、カトラリーは水滴が付いていて、天井のモビールは絡まり、「本日のケーキ」が書かれた看板は遠かった。
この店、数年に1回行くたびに、残念な気分になる。単に僕とは、合わないのだろう。
でもうっかり、島田駅前に行くと寄ってしまう。今日が人生最後の来店であればいいな、と思ったのだが、きっと忘れたころに(そう、忘れてしまうのだ)訪れ、そしてまた小規模な不幸に遭遇する気がしてならない。島田駅前、他に代替の「コーヒーを飲める店」があればいいのだけれど。

 

サンドイッチといえばこの小説。
それと「月と六ペンス」も記憶に残っている。 

それからはスープのことばかり考えて暮らした (中公文庫)

 

 

それからはスープのことばかり考えて暮らした (中公文庫)

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月と六ペンス (新潮文庫)

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図説イングランドのお屋敷 ~カントリー・ハウス~

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