アルゼンチン映画『人生スイッチ』

雨上がりの静岡市へ、映画を観に行った。
今日はミニシアターで『人生スイッチ』を鑑賞。

なかなか快作というか怪作というか、ブラックな喜劇なのに見応えがしっかりある、面白い映画体験だった。

早いテンポで、6つの短編を見せる、オムニバス映画。
とにかく「ひょんな事から不幸のスイッチが入ってしまった人々」を描いていく。
やや日本人には理解しがたい、南米ジョーク的な笑いの要素が強い。そして下品だったり、殺伐としていたり、とにかく身も蓋もない状況が延々と続く。このあたり、米英やフランスのコメディ映画とは、ちょっと違う。日本の「面白くて哀しくて、最後に温かい涙が」とは、全然違う。
ちなみに「救い」とか「癒やし」とか「ハートウォーミング」の要素は、ほとんど無い。気分が暗くなる、と人によっては捉えるかもしれない。つまり、何も考えずにげらげら笑うのは、ちょっと難しい。

さらにいうと、6短編を終えるとひとつの大きなストーリーが、といった仕掛けも無い。どうしようもない不幸な状況と人々を、綺麗な南米音楽とともに延々と観ることになる。
「これが本当に「アナと雪の女王の興行成績を抜いた」のかよ、アルゼンチン人は理解しがたいぜまったく」と思えてくるが、でも本当にかの国では、大人気だったらしい。

とはいえ、そういうアルゼンチン的なブラックさをわかってくると、やっぱり面白い。飽きずに延々と、他人の不幸や嘆きを(滑稽なものも、見るのがつらいものも)鑑賞し、そして笑えてしまうのだ。

 

そして一番不思議なのは、見終わった後に、なんだか力強さが体に沸いてくること。ほんのりと、でも普段の自分には無い、南米的なエネルギー感。

これはあれに似ている。南米文学。
南米の近代文学をたまに読むと、やはり違和感が多くて完全には没頭できないのに、でも人生の活力とか、世界の強さみたいなものが伝わってくる。完全に個人的な効能だが、でもそれがこの映画にもあった。

もう一度、映画館で観てもいい、とさえ思う。
こんな変な映画は久しぶり。「いつか起承転結の“転”が来るだろう。このろくでもない状況から、世界の優しさと奇跡へと転換するに違いない」と期待して、でもそんな場面は一切無くて、そのうえで映画館を出た時に元気になるなんて、なかなかできる体験ではない。
子供の頃、深夜にうっかり見始めてしまった「わけのわからないフランス映画」が、説明不可能な強い印象と睡眠不足を残していったように、この映画も、タイトルは忘れても、心に残りそう。
初々しいデート向きではないけれど、家で親しい人と鑑賞するにも良さそうな気はします。
この映画の良さを、きちんと説明できる教養が欲しい、と今は思っている。月並みな表現だと「とにかくおすすめ、カトウ的には」です。

 

人生スイッチ

人生スイッチ

 

 

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さて、映画の後のおやつは、「マーニーズ」の「ベイクドシフォンケーキ・バター味と、コーヒー。
バターの塩気が、軽くトーストしたような黄色いシフォンケーキと生クリームに加わり、実に美味しい。コーヒー用の味、だと思う。

それ以外は、買い物をしたり、大型ショッピングセンターで迷ったり(駐車場が広すぎるのだ)、本を買って、休日が終わった。
やや眠く、しかし読書はしておきたい。本当は他にも片付けたいことが多々あるが、それはもう諦めた。休日はToDoリストのためにあるわけではないのだから。

 

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