そんな食べ物があるのか、と自分でも不安になりながら、遠くおぼろげな記憶を元に「梨と白玉団子のスープ(仮称)」を作ってみた。たまたま今日は、梨(21世紀)が安かったのだ。
どこで食べたか、いつ食べたのかすっかり忘れてしまったが、作れる確信と意欲があり、そして材料もある。まあ、単純な料理だから、思い立ったらすぐできる。ただし全ては、僕の想像の産物。初めて作ってみた。
梨は皮を剥いて薄切り、さらに細い銀杏切りにする。もちろん芯は抜く。僕は横着して、皮はピーラーで、その後に輪切りにして芯は型抜きで取り除き、あとは小さめに切った。
薄めのシロップを作る。これは、かなり淡い味。隠し味に果実酢を加えた。たぶんリキュールの類が良いと思うが、お酒が苦手なので。
ほんの少し塩も入れる。塩は、たぶん重要な要素。でも塩辛くはしない。
そして、こんなことをして大丈夫かと思いつつ、庭のローズマリーを投入。いきなり料理の雰囲気が変わるが、気にしない。
ここに梨を漬け込む。たくさん入れて、冷蔵庫で寝かせる。早く食べたかったので、ぐるぐるかき混ぜて果汁を出したりもした。梨味のシロップができればいい。
白玉団子は、冷凍品。加賀のお土産でいただいたもの。なぜ加賀からそんなものが、とは思うけれど、きっと名産品なのだろう。冷凍白玉は実に楽だ。でももちろん、普通に作っても失敗しないのが白玉団子の良いところ。
茹でた白玉と梨とシロップをガラスボウルに入れて、完成。なんとなくクコの実も浮かべた。ローズマリーは取り除く。
これをスプーンで食べる。
ほんのり薄味なのが持ち味。梨は荒くピューレにしても良かったかもしれない。
ローズマリーは主張が強い。遠くに感じるくらいでも、異国感は出ると思う。和梨で異国感が必要かどうか、は議論が必要だが、ともあれ変わった味だった。料理のバリエーションとしては悪くないし、なんとなく「料理上手のおもてなしデザート」に見える。無難に作るならば、ハーブはミントにしても良さそう。あるいはミントティーのティーバッグをシロップに少し浸けて香りづけする、とか。
ところでこれ、どこで食べたのだろう。本当の名前は何なのだろう。食べたのではなく、料理本で読んだだけ、という可能性もある。
韓国料理にありそうな気がする。
検索してもかまわないのだが、それで“正解”とのズレが顕になってもつまらない。想定通りの味に仕上がったのだから、これで良しとしたい。
しかしどうしてここまで確信があって、手探りの料理を作れたのだろう。スーパーマーケットで梨を手にとった時から、もう完成形が見えていたような気がする。我が事ながら、不思議だ。「よしもとばなな」の小説ならば、主人公に(ささやかな、しかし決定的な)奇跡が起こる場面だ。