チュロの飛んだ日

卓上型チュロスメーカー チュロスマシーン Mサイズ 並行輸入品


チュロス、って知っていますか。
たぶんスペインかポルトガルか、あの辺りの郷土菓子。調べたわけではないけれど、あの甘さと油の味わいは、南ヨーロッパが発祥だと思う。少なくとも奈良や新潟ではない。
口金をぎざぎざにすることで揚げる際の爆発を防ぐのは、素晴らしいアイデアです。ドイツ人なら爆発防止剤を開発するでしょうし、イギリス人ならば茹でて済ませる、そんな気がします。どこかイスラムの知恵も感じる、甘い揚菓子の筆頭といえるでしょう。

食べたことがない人は、ぜひ食べてみてください。苦いコーヒーによく合う味。残業で疲れた夜に、こっそり食べると、殊更の美味です。明るい地中海の日差しの下で食べるよりも、あるいは似合っているかも、とさえ思います。

 

田舎に暮らしていて、いちばん手軽に買えるチュロスは、ミスタードーナツの「ハニーチュロ」でしょう。
さすがミスド、きちんと日本向けアレンジが施された、しかし及第点以上の良いチュロスだと評価しています。なぜ「ハニーチュロス」と表記しないのかは謎。「パフェ」を「パルフェ」と呼ぶファミリーレストランが存在しますが、商標か何かの都合だと推測しています。

このハニーチュロ、いわゆる棒状のチュロスと違って、くるりと輪になって揚げてあります。Uの字をさらに窄めて、涙滴型のリングになっている状態を思い浮かべてほしい。きっと商品としての取り回しを考慮した形状だと想像しているのですが、実際のところはわかりません。やや食べづらいけれど、味はきちんとチュロス味です。

 

今日もこのハニーチュロを購入するつもりでした。
なにしろ疲労した金曜日ですから仕方がない。あと7分で閉店、という時刻に、他のいくつかのドーナツと共に包んでもらうべく、トレイに載せ、レジに向かったのです。
コーヒーサーバーは洗浄と消毒をしていたようで、コーヒーを買うのは躊躇われました。
店員さん達だって、金曜日の夜にドーナツや飲茶なんて売りたくは無いのでしょう。ぱっと片付けて、ささっと帰る、それがあるべき姿だと僕も思います。

しかし今日の店員さんは、さすがに気が急いていた。
ハニーチュロをトングで掴む時に、涙滴型のトンガリのほうをつまんだのです。
植物油とハチミツ・グレーズで滑るあの形のものを、あのように掴むとどうなるか。
飛びます。どういうわけか、ピュッと音も出ました。

飛んだハニーチュロは、僕の胸に当たり、2mくらい遠くの床面に落下しました。
総飛行距離は2.6m程度でしょうか。トングの開閉で、そこまでの運動エネルギーを伝えられたのですから、大したものだと思います。

別にハニーチュロが飛んでも、大した問題ではありません。
幸いなことに、チュロスを当てて侮蔑や挑発をする文化は、静岡県には無いですから。

残念だったのは、そのハニーチュロが最後の1個だったこと。
床に落ちた商品は、売ってくれないのです。さっと洗って、粉砂糖でも振れば僕としては構わないのですが(ダスキン社の誇る業務用消毒液を使えば尚よろしい)、その種の臨機応変はミスタードーナツには期待できません。
「僕はどうしてもハニーチュロが食べたいんだ。フライデーをブルーな気分で締めくくりたくないんだってば!」と駄々をこねれば、1個だけ作ってくれたのかもしれません。でも僕は紳士、しかも甘党紳士です。例え辛くとも、にっこり笑って高楊枝でなければならない、そう自分を律せなければ、ただのスイーツ・ジャンキーに成り下がってしまうのです。甘党紳士倶楽部の入会時に誓った3つのモットー、「規律、道徳、博愛」が試される局面だったのだといえます。
大丈夫、僕は今日も紳士だった。飛行するチュロスに出会えた幸運こそ、今日の収穫だったと言えるでしょう。

 

だから仕方なく、というわけではないのですが、代わりに購入した新製品のシナモンドーナツの美味しさは、なんだか少し違うのです。金曜日の夜、って感じがしない。このクロワッサン風のモノは、求めていたアレではない。

でもまあいいや、と思えるのは、「ハニーチュロはいつでも買える」という知識があってこそ。知識が人を強くする。
コーヒー1杯程度のカフェインでもたらされる覚醒効果は約15分、と知っているからこそ、コーヒーを夜中に飲んでも平気。そうやって生きていくと決めた時、僕は強くなれたのだと思っています。
ちなみに他のドーナツは、ラップフィルムに包んで、チャック付きポリ袋に入れて、冷凍しました。小さく切っておくと、少しだけ食べたい時に便利。

そんな小さな事件が、今日のトピックス。他に書くべき事はありません。
ところで、明日は何が飛ぶのだろう。

 

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外はサクッ、中はもちっ ドーナツ&チュロス

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