MOU、というプロバイダからの電話

帰宅したら、父と母がなにやら相談している。
インターネットの回線かプロバイダか、そういう関係の勧誘電話があったそうだ。

  1. 会社名は「MOU」
  2. 通信サービスの会社
  3. NTTの光回線を切り替える作業をしている
  4. 手続き不要、NTTとは「話が通っている」ので何もする必要がない
  5. 現状よりも確実に安くなる。しかも今なら3ヶ月の無料期間がつく
  6. プロバイダのメールはそのまま使える
  7. 手続きどころか、設定の切り替えも不要
  8. つきましては、30分後に技術担当が確認の電話をしますので、そのままお待ちください
  9. 切り替え作業中はインターネット回線を使用しないこと

だいたいこんな内容だったという。
両親は通信事業を営む会社で定年まで勤めていて、知り合いにも詳しい人がたくさんいる。だから色々な人に電話をして、これがどういう種類の業者で、どのような技術的なカラクリで、この切り替えが行われるのかを情報収集していた。そもそも現時点で了承の意志は示していないのに、こういう事が行われるものなのだろうか。

話を聞いた僕からしても、なんだかよくわからない話ではある。
インフラの部分で低料金の別業者に切り替えて、結果として負担が減る、といった話だったと応対した父は言っていた。しかしそれならば回線業者(例えばNTT)が連絡をしてくるはずであり、「話が通っているから、確認と契約を電話で行います」なんて中途半端な手続きはしないだろう。それに「ルーターに登録するプロバイダ関連の情報は書き換え不要です」というのも不気味だ。

いわゆる「プロバイダの勧誘」電話には慣れている両親も、この件については少し困っているようだった。

こういう時は、インターネットに頼るのが良い。
「しばらくの間は、インターネット回線を使用しないこと」なんて言っているが、そういう話を真に受けてはいけない。駄目なら携帯電話で調べればいい、くらいの気持ちで、とりあえずパソコンで調べてみたところ、あっさり正体が判明した。

 

この「MOU」は、国民生活センターが動きそうなくらいに悪質なプロバイダだった。
別に回線を切り替える訳ではない。

ラクリとしては、こんな感じ。

  1. 技術担当者からの電話指示に従いパソコンの操作をすることで、遠隔操作によるパソコン及びルーターの設定変更を行う
  2. 回線はそのまま。例えば「フレッツ光」の料金は、切り替え後も当然、発生する
  3. 現在のプロバイダは(もちろん)解約されない
  4. だからプロバイダのメールアドレスは引き続き使用できる
  5. 月額料金は安いが、違約金・解約手数料などが高額
  6. オプションなどをつけると、特別に安いわけではない

昨今のパソコンはユーザーが承認すれば遠隔操作ができる、ということを知らない老人ならば、「なるほどこれはプロバイダの切り替えではない、光回線に関するものなのだろう」と思ってしまうかもしれない。何しろメールアドレスは引き継げるし、自分で設定もしないのだ。電話の指示に従っていくつかの「OK」をクリックするだけの作業。
そして後日、請求書が届く。契約はどこかの段階で「OK」ボタンを押した時点で成立しているのだろうし、実際にプロバイダとしてMOUのサービスを使用しているのだ。

例えば「水道局のほうから来ました。現在、上水道を点検中です。家の中には入りませんが、ちょっとした工事を行いたいのです。承認いただいて30分ほど待てば、水道料が大変オトクになります。ところでお名前を伺ってよろしいでしょうか?契約書?口頭で済ませます。後日届く契約書に捺印をお願いします」なんて言われても、多くの人は信じない。老人だって、それくらいはわかる。家の外に、怪しい配管が新設されれば、不審に思うだろう。

でもこれがインターネット回線やプロバイダに関することで、ほとんど手を煩わせずにいつのまにか切り替わっているのだとしたら、きっと騙される人はいる。プロバイダの設定項目と回線の設定、それぞれがどういう仕組みで、どれだけの料金が発生しているのか、きちんと整理して判断できる人のほうが少ないのかもしれない。

インターネットに関することは、息子夫婦が帰省した時に全ておまかせしている、なんて老人は多いと思う。プロバイダの契約が2重になったとしても気づかない人はいるだろう。

 

要約すると、今回の「MOUからの電話」は、NTT(と光ファイバー網)とは全く関係の無い、単なるプロバイダの「勧誘電話」だった。単なる、というかかなり悪質だと思う。

聞くところによると、このMOUは、解約するのにわりと手こずるらしい。
そういえば先ほどかかってきた「MOUの技術担当者」には、話がさっぱり通じなかった。「いや、もうアカウントは作ったし、あとはこちらの言葉に従って操作してもらえれば大丈夫なので!」と繰り返すばかり。契約の意志が無いこと、だから設定の変更はしないこと、そしてこの電話は録音されていること(これはハッタリ)を伝えたところ、ようやく「じゃあいいです」ということになった。

何が、「大丈夫なので!」で「じゃあいいです」だよ、とは思う。
しかしこの技術担当者を名乗る男のしゃべり方からは、「マニュアルに無いことは全くわからない」という人間に特有の雰囲気が感じられた。「言葉巧みに、この無知な消費者を騙してみよう」なんていうモチベーションも意志も無い。
最近は、といっても昔のことは知らないのだけれど、電話を使った詐欺業者の質が落ちているように思えてならない。仕組みは巧妙に、規模は大きく、しかし実行する人間の知識や意識はおしなべて低い。
末端に位置する彼ら彼女らには、詐欺産業を牽引する者としての気概が欠けているように思える。「派遣会社を通じて、テレフォンアドバイザリースタッフとして適当に働く。いつまで続くかはわからない。仕事に愛着は無い」程度の労働力なのかな、と想像している。詐欺的行為を働いている、なんて思っていないのかもしれない。

 

攻殻機動隊 (1)    KCデラックス

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