フェンス越しのクリスマス・イルミネーション

転職して、もう数ヶ月が経った。慣れたところも多いが、未だに戸惑う部分も少なくない。それが笑い話になるか、あるいは腹を立てるべき事柄なのかは、その時の疲労度や機嫌によってずいぶん違う。
たぶん性格なのだろう、「これは素晴らしい企業文化だ。誇るべき風土だ」と思うよりは「ちょっとそれ不味いんじゃないか」みたいな発見のほうが多い。
文化の差異はおしなべて興味深いのだが、しかし仕事の場としては、それだけで済むものではない。
今日は、こんな“お達し”があった。

 

「新製品が発売されました。従業員の皆様は、ソーシャルメディアに対してポジティブなコメントやレビューや投稿をして、営業部門を下支えしてください。なお、従業員や関係者であることは、もちろん明かしてはなりません」

これ、法律違反かどうかはわからないが、たぶんAmazonFacebookTwitterの運営会社に「やっていいですか?」と問い合わせたら「駄目です」と言われる。社会的にも駄目だと思う。それが高額商品で、ほとんどの従業員が買わない品であることも含めて、なんとも味わい深い。

 

 

「勤務管理システムが変わりました。今まで残業時間は30分単位での入力で、それを超えた分(例えば31分から59分)は“切り捨て”でしたが、今後は1分単位での入力になります。なお、月末に合算して、30分単位で集計、余った分は“切り捨て”を行います」

今まで「25分くらい残業したが、残業代には反映されなかった」といった事が多く、それは変だ、困ると意見を言ってきた。「きちんと30分ずつ働くように自己管理すればいいじゃん」という話ではない。
その点、これは改善といえる。でもこの変更、労働法の理念からすると、「事務処理の簡便化のために月ごとに30分単位での集計」はOKだとしても、「30分で割って、余りは切り捨て」はおかしい。平等を図るのならば「30分を境に、切り上げ・切り捨て」をしなければ駄目だと思う。払い過ぎは株主と経営者への背信だが、無賃労働は法律違反になる。

 

 

「恒例のクリスマス・イルミネーションが始まりました。ご家族や親しい人達と記念撮影など如何でしょうか。写真コンテストを行いますので、そして20代の従業員は強制参加ですので、その辺りはよろしく。もちろん構内は撮影禁止です。
なお、イルミネーション・ゾーンは、社員以外立ち入り禁止です。幸いなことに、駐車場から見える位置ですから、撮影はフェンス越しにお願いいたします。フェンスに触ると警備員が来ます」

監視カメラと金網越しにクリスマス・イルミネーションの記念撮影をする、それを強制参加させるというディストピア感。画面の隅に警備員が写っていたら素敵だ。僕は20代ではないから、参加しないで済んだ。

 

 

こういう色々について、誰も異議を唱えたり、あるいは違和感を表明しないところが、なるほど異文化だなあと思う。苦笑すらしない。試しに(雑談中の質問の形で)同僚や上司に聞いてみると「えっ、会社ってこういうものでしょ」という反応が返ってくる。誰でも知っている大きな会社という事もあるのだろう。「会社の常識」への信頼感が強い。
僕としては、事を荒立てずに、しかし言うべきことはきちんと何らかの形で伝えていきたいと考えている。一応、中途入社組として、「外からの意見」が求められているようなので。
しかし「新人の皆さんへ。職場におけるコンプライアンスに関する問題点を、包み隠さずWebフォームから入力して下さい(100字以上)」みたいなアンケートが来たけれど、調べてみたら社員番号なども同時に送信されるので、ちょっと困っている。まあ、書いちゃうけど。