出勤したら、大きな設備に不具合が発生していて、いわゆる“現場作業”がほとんどできない状態だった。自分の場合は、研究と試験に用いるサンプル作りが一時停止状態となった。他の人達も、今日やるべき作業が全然進まない。しかし今日は上半期の最終日だったため、誰もが心置きなく書類仕事に邁進できたようで、これはこれで有難かったようだ。僕は今のところ期末にやるべき仕事などは割振られていないために、わりとのんびりと過ごすことができた。
午後に、新人研修中の人達が集められ、その不具合が発生中の設備を見ることになった。「まあ、これも勉強だから」という感じで、ヘルメットをかぶり遠巻きに見学した。設備管理は僕の仕事ではないけれど、こうして色々な部署を実地に見るのは社会見学みたいで好きだ。
その見学の最後に、いちばん壊れているところを見た。見てはじめて気づいたが、かつて自分が（昔の勤め先で）携わった機械と故障にそっくりな状況だった。
試しに、控えめな意見具申をしてみる。「素人の意見ですが…」と、上司に意見を伝えた。結果として、その意見が功を奏して、夕方には設備は復旧した。
まあ、幸運だったと思う。なかなか起こることではない。正直に言って、「四日市コンビナートじゃ常識だぜ」というレベルのトラブル。担当部署の人達と、出入り業者さんが気づかなかったのが不思議なくらいだ。
まだ配属されて間もない人間の意見を聞き届けてくれた上司と設備担当者こそ、今回の事例の功労者（？）だと思う。
でもとにかく、“終礼”みたいな場で、「この新人の意見がきっかけで復旧できた」といった発表がされ、ぱちぱちと拍手もされた。
帰りがけにはワッフルも貰ってしまった。このワッフルこそ、今日いちばん嬉しかったことだといえる。化学コンビナートで働いていた経験が、物品の形で評価されたのは今回が初めてかもしれない。
ちなみにワッフルの包装には「チーズクリームとカスタードの素敵なハーモニー」と印刷されていたが、味はバタークリームっぽかった。
