レトルトの理由。ネコとササミとジャムと離乳食。そしてドーナツ。

 
仕事中の雑談。
「ネコのエサ、使いきりの生タイプを買った。使用期限はなんと6ヶ月。怖くなって使うのを止めた。これからはササミを茹でて与えるつもり」
「わかるわかる、離乳食も賞味期限が長くて怖い。インターネットでは危険性を謳う情報に溢れている。あれを使う親は信じられない。私は出産したら、ぜんぶ手づくりする」
そういう会話がされ、意見が求められる。なにしろ雑談なので、ほぼ反射的に「ああ、レトルトですね」と言う。
ネコも飼っていないし子供もいないし、ふとボンカレーの事が頭に浮かんだのだ。長持ちといえば保存食で、そして我が家では9月1日にレトルトカレーの在庫を更新する習慣がある。
「カトウくん、レトルトって、どういう事?」と聞かれる。
地雷を踏んだとはいわないまでも、望ましくない、場に相応しくない回答だったようだ。ひやっとする。雑談のベクトルをほんの少し変えてしまった。
水を差すみたいで申し訳無いけれど、聞かれたからには説明する。
せめてこれ以上は水を差さないように気をつける。具体的に言うと、ここで「滅菌」といった用語は使ってはいけない、そんな気がする。そういう言葉は求められていないと思う。
そこでジャム作りの話をする。ナチュラルで昔ながらの、苺ジャムの作り方。
ビンをぐつぐつ煮て、熱いジャムを注いだらすぐに蓋をする。するとジャムは、常温で長時間保存できる。
大切なのは加熱と密封であり、何かを添加しなくても(砂糖の濃度については置いておく)食品を長持ちさせる事ができる。素晴らしい。不自然なところはひとつも無い。
そういう話を(できるだけ短時間で)したところ、話題は缶詰やオイル漬けに移った。
この説明で、レトルト食品をむやみに怖がらなくなったのかは、実際のところよくわからない。
でもジャムを不自然なものとして忌避している訳ではなさそうだから、そして僕はサイエンス教の殉教者ではないから、ほっとして口をつぐむ。
だいたい、僕が茹でササミや離乳食を作る訳ではないのだから、頑張ってレトルト殺菌の弁護をする理由も無いけれど、それはそれとして、上手い具合に雑談を切り抜けられたと自己評価している。




こういう話を聞くと、いつも思うことがある。
「何かを知り“目からウロコ”状態になった時は、それが真実を照らした証明にはならない。多くの場合、それは単に自らの無知を示すだけである」ということ。
普通に生活している限り、つまり研究者でも無い限り「Eureka!」が訪れる事は確率的に少ない。
少なくとも科学の分野では、うっかり油田を掘り当てるのは難しい、そういう(ある意味ではつまらない)時代だと思う。




もう一つ、この種の話題に登場する「強力な、反自然的な化学物質」の存在について思う。
多くの錬金術、金儲けの手段と同じく「そんな便利なものがあったら、既に市場を席巻している」のではないだろうか。
例えば食品保存料。
それを添加すれば不自然なまでに長持ちするようになる。恐らくは何らかのしっぺ返しがあるだろう、という話はよく聞く。「大手メーカーの食パンは“不自然に”長持ちする」といった話。
でも実際のところ、それは衛生管理の賜物であって、微生物の戦いに完全勝利する薬品などは未だ存在しない。
かつて話題になった「1年経っても変化の無いマクドナルドのハンバーガー」というのは、要するにミイラであり、ミイラは特に不自然なものではない。昔からある。
もし微生物を完全制圧できるような手段があったらどうだろう。食味が多少は劣れど、そして身体にある程度の害があったとしても、軍隊や災害救助組織や探検隊、採用するところはいくらでもある。
しかし現実には、最新のアメリカ軍でさえ、レトルトと感想食材の食事を(重い不味いと文句を言いながら)使っている。
塩と砂糖とアルコールは強力だが、使いすぎると健康を害するし、だいいち美味しくない。
人間は未だ、日常生活のレベルでは、微生物を制圧できていないし、自然の道からは踏み外す程の知恵も無い。







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と、雑談の後もひとりで悶々と考え事をしていた為に、金曜日だというのに時間があっという間に過ぎた。
そして帰宅前にミスタードーナツに寄る。
今日は新作の「クリのドーナツ」を食べた。美味い不味いとは別に、もう一度食べたくなる味だった。「これは、クリだろうか。いったい何なのだろう」と分析的に食しているうちに食べ終わってしまった。
クリのドーナツはともかく、レギュラーメニューは100円均一だったし、コーヒーは淹れたてだったので、それなりに素敵な終末のご褒美だった。





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