地図を読む能力の無い旅人

 
今日も休日。世間は平日。
体調を崩した友人のところへお見舞いに行く。少し話をする。
どっさりと各地の銘菓をいただく。お盆に親戚が集まる家なので、お土産のお菓子がたくさん集まるそうだ。そして甘いものを食べる習慣が無い家でもある。
というわけで、ほとんど手つかずのお菓子がたまっていて、それを僕のために取っておいてくれた。有難い話である。
静岡に住んでいると滅多に食べない「静岡銘菓うなぎパイ」も貰った。お饅頭や生八ツ橋(餡無し)も嬉しい。
そして仏壇に供えてあった梨もたくさん分けてくれた。






ここしばらくの運動不足を解消するつもりで、海岸沿いのサイクリングロードをぷらぷらと走る。
自転車を進めている間は涼しいが、停めると暑い。「もう夏も終わりかな」とか、朝に思ったのだが。


そして木陰で休憩していた時に、外国人の自転車旅行者に声をかけられた。バックパッカーがマウンテンバイクに乗っているような、タフな感じの白人のおじさん。
「すっかり道に迷ってしまって、サイクリングロードを見つけてとりあえず走ってみた」と言う。かばんに、どこかの国の三色旗(見慣れない組み合わせ。なんとかスタンとか、旧ソ連の国と推測)を縫いつけている。
日本語がそれなりにできる。祖国では日本語塾で働いていたらしい。教育者にしては変な日本語だが、なんとか意思疎通はできる。変な日本語と、僕の変な英語と、ペンと紙とスマートフォンで会話した。


しかしものすごい迷いかたをしている。普通はうっかり間違えても、この海岸には来ない。そして話を聞いていると、ますますわけがわからない。
まず「成田山から来ました」と言う。成田山は千葉にある。さらに聞くと「浅草から来ました」と言う。東海道なり国道1号線なりを西に進んでいるという感覚に欠けているように思えてくる。
かなり色々な土地で迷走しているのではないか。自転車ツーリストで、こういうタイプは珍しい。
たぶんこの人は、まだ日本の土地勘みたいなものが頭にできていないように(話の端々からは)感じられる。地図の上を走らせる指が、やけに大きく動く。数日間の試行錯誤も気にしない感じ。
ともあれ、見慣れない文字の日本地図(かなり大雑把)と、彼の持つGPS受信機(ガーミンの緯度と経度だけ出るもの)と、僕のスマートフォン(明るくて見づらい)を付きあわせて道を教えた。
途中の曲がるポイントと、今日の目的地(自然公園の駐車場)までの略図を描いて渡した。
カーナビを導入してから使っていない「まっぷる」を渡した。古いものだが、無いよりはましだろう。梨もひとつあげる。おやつ用に買ってあった「オールレーズン」も譲る。
略図を渡した時に「スカウトなの?」と聞かれた。「ボーイスカウトみたいだ」という意味か、それとも「斥候の経験があるのか」という意味合いなのか、ちょっとわからない感じ。
もしかしてこの人(土地勘が無いうえに)地図を上手く読めないタイプかもしれない。日本人にとっては当たり前だが、地図が読めなくて当たり前の国が欧州にはあると聞く。手書きの地図に、妙に感心していた。
でも恐ろしく頑健そうで、不安感は全然無い。なかなかかっこいい。梨も渡したとたんに、むしゃむしゃ食べてしまった(もう一つ渡した)。



今になって、Facebookか何かのユーザー名だけでも聞いておけば良かったと後悔している。
flickrのステッカーは貼ってあった。それ以外は手がかりが無い。
きっと面白い旅だろう。追跡したかった。




それ行け!! 珍バイク